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モンスターファミリー現る?

 俺はベットの上で絶賛ポージング中です。

 マッパです、マッパ。産まれたてです、産まれたてのすっぽんぽん。

 朝も早よから何をしてるのかといいますと、確認作業です。

 角と尻尾と翼が生えたんだから、現状をキチンと確認しないと今後の生活に支障を来しますから。

 …容姿で差別とか、友達無くしたりとか、進学就職が駄目になったりとか、一家離散とか、夜逃げとか、イケナイ薬に手を出すとか、見せ物小屋に売られるとか、国際研究機関にモルモットにされるとか、悪の組織にスカウトされるとか、新興宗教の活き本尊にされるとか…。

 取り敢えずそれらの事に巻き込まれないように、特にリーナさんとの恋路に邪魔が入らないように現状確認は大事です、ハイ。

 …そんなもん角と翼と尻尾が生えた時点で絶望的とか思わない。あくまでポジティブシンキングです、悪魔だけに。

 うんうん♪俺って朝から冴えてるー♪








 …すびません、調子に乗りすぎました。今の言葉は無かったことにして下さい…。かなり錯乱しているようです、俺。


 …こほん…、取り敢えず検証結果を発表します。

 ・角、触覚痛覚があります。目立ちます。

 ・羽根、触覚痛覚があります。羽ばたけるけど飛べません。

 ・尻尾、触覚痛覚があります。自由に動かせるし尾長猿みたいに鉛筆や筆箱程度は掴んだり持ち上げたりはできますが、細かい動きは出来ないし体を支えたりなんかの力業も出来ません。


 ・結論、唯の邪魔…。










 何か酷くないですか!?俺だけこんな風になるなんて!!

 百歩譲ってこんな姿になったのを良しとしてだ!!普通なら素敵なプァワァーが備わるもんだろうがよぉぉぉ!!

 あんまりだ、あんまりだよ、神様仏様魔王様厨二病様!!


 …っと素っ裸でベットの上で四つん這いでプリチィなオケツを震わす俺、葛葉 匠(16)なのでした…。ああっ、俺ってなんて哀れ…。




 …とそんな忘我の涙を流していても時間は無情に過ぎ去り…。

「匠、起きてるの!?リーナさんを迎えに行かないといけないんでしょ!一日坊主なんて止めなさいよ!

それと鈴も降りてきなさい!」


 …と母さんの呼ぶ声が階下から聞こえる。これを無視すると問答無用で部屋に踏み込まれ、まだ寝ているようならベットから蹴落とされる事になる。


 …早く着替えて下に行かないと!!この現場(特に俺の状態の事ね)を見られては!!


「はいっ、はいはい、すぐ行きまーす!」


 俺は慌てて返事をしながら脱ぎ捨てていたボクサーパンツ(m&○’sチョコレート柄です♪キャッ♪)を素早く履く。


 しかし珍しい事もあるもんだ。俺は兎も角、しっかり者の鈴が寝坊するなんて…。



 そんな事を考えながら制服を取り出すべくクローゼットを開け…、







すぱーん!!







 …全力で閉めた…。


 …ななななな、なんだぁ?!昨日の『アレ』は夢じゃ無かったのか?!

 クローゼットの前で狼狽える俺。


「もーっ、何するんですか、ご主人様♪

ビックリするじゃないですか♪」


 今閉めたばかりのクローゼットかカラリと開き、真っ裸の鈴が文句を言いながら出てきた…。…おい、何故クローゼットにいる、そして何故全裸なんだ!?


 フリーズしている俺を余所に、健康的な小学六年生の肢体を惜しげもなく晒し、部屋の真ん中で伸びをする鈴。肩まで揃えたサラサラの黒髪が朝日に輝く。

 …あっ、俺と同じで角が生えてるし、蝙蝠の羽根も矢印尻尾もある…。


「…ふーんっ♪

いや~、昨晩は申し訳ありませんでした、ご主人様♪

『貴男様』とは気付かずにあやうくチョメチョメするところでした♪」


 …おいおい、サラッとトンでもないことを宣いやがったな!

 …んっ?待てよ?『するところでした』ってことは?


「お、おい、鈴!俺等は昨日、何もなかったんだよな!?最後の一線は越えてないんだな!?ご先祖様に申し訳ない事になってないよなっ!?どどどどどうなんだっ!!?」


 ドモリながら鈴の両肩を掴み詰め寄る冷や汗ダラダラの俺。鈴のパッチリした瞳に青い縦線を三本ほど入れた焦りまくった俺の顔が映る。


「はい♪何もいたしませんでしたよ♪

…っていうか、ご主人様は近○相○がお好みだったのですね♪では、私めはこの娘の『意識の陰』に入ります♪ゆっくりとお楽しみ下さい♪」


 またとんでもないことを宣うと、鈴はすぅっと無表情になった。


「…おい、鈴…?」


 掴んだままの鈴の小さな肩を軽く揺する。だが鈴は無表情のまま、頭を前後にカクカク揺らすだけで正気には戻らない。


 ……しかし、だ。…改めて鈴の体を間近で見ると、何だか丸みを帯びて出るとこ出てきて、……ええなぁ♪





 ……ってイカンイカン!!何をトチ狂ってんだ、俺!!さっきの鈴の言ってた○親相○なんて俺の趣味じゃないのだ!!

 ブンブンと頭を振るって変な考えを追い出そうとしている俺の鳩尾に鈴の拳が刺さった。


「ごぶっ!?」


「何触ってんのよ、変態おにいちゃん!気持ち悪い!!」


 いつもの調子の辛辣な鈴の言葉がうずくまる俺に降り注ぐ。


 …いっ、何時、…正気に戻った…。…ふ、不意打ちは卑怯だろう…、おえぇっ…。


「…?…いやだ?!何で私裸なの!?きゃー!!!!」


 現状を理解した鈴が悲鳴を挙げながら俺の部屋を文字通り、背中の羽根で『飛んで』出て行った。 ちょっ…、ちょっと待て…。さっき殴ったのって俺が鈴の裸を見たからじゃないのかよ?肩を触ってたからだけか?


 俺どんだけ害虫扱いなんだよ…。しかも、鈴だけ飛べるなんて狡くねえか、神様よ…。









 ……何とか着替え終わりました。……只今、葛葉家のリビングです。……俺は夢を見ているんでしょうか?


「匠、おはよう。ぼさっとしとらんで座らんか」


 父さんが食卓の上に広げた新聞の『上に腰を降ろして』新聞を読んでいる。

 ……父さんの背丈が新聞一面の大文字相当の大きさに見えるのだが……。

…何だか父さんチッチャくね?…童話に出てくる小人だよ…。


「匠、朝から鈴に何したの?大声挙げてみっともない。ご近所迷惑だから止めてよね!

…ほら、ぼさ~っと立ってないで早く座って食べて頂戴」


 母さんは台所から『這って』湯気の立つご飯茶碗を運んできた。

 …お母様、下半身が蛇になっているのですが、ご先祖様に蛇神様に不敬を働いた者がいたのでしょうか?…ギリシャ神話でいうところのラミアかね…?


 俺がフラフラと自分の席に座ると、鈴が俺の耳元に頭を寄せてきた。因みに鈴は角も羽根も尻尾も隠していない。初等部の制服の背中に切り込みが入り、そこから羽根を出しているし、スカートの裾からは矢印尻尾が出ている。


 …パンツに穴を空けてるのだろうか…?


 俺なんてワイシャツの下に羽根を押し込んでスラックスの右足に尻尾を隠しているというのに…。


(ねえ、何で私が裸でお兄ちゃんの部屋に居たのよ!?何したの!?)


(うるせー、昨日の夜中に勝手に俺の部屋に入ってきて、勝手に裸になって、勝手にクローゼットに入ってたくせに…。それに突っ込む所はそこじゃねえだろ!父さんチッチャいし、母さん蛇だし俺とお前は悪魔みたいになってるし!!)


(はん!?何の事よ。はぐらかそうたって、そうはいかないんだから!!

 …本当に本当に私に何もしてないんでしょうね?

!)


(何もしてない!!俺に幼女趣味は無い!!)


(……お兄ちゃんは、助平だけど嘘はつけないわよね……。

…いいわ、今回は信じてあげる。

 でもまた今回みたいな事が起きたら父さんと母さんに言いつけるからね!!)


 鈴は素早く俺から離れると、手を合わせて黙々と朝ご飯を食べ出した。

 妹を襲おうとした変態兄貴の容疑はどうにか晴れたようだが、それよりも問題である我が家族の変貌振りに気付いているのが俺だけという異常事態。





 誰か助けて…。

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