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何でそうなった?やっぱりそうだった!(2)

 

 俺は牛というかミノタウロスというか、リーナさんの父親のヨアンさんが右手を差し出した。所謂握手だろう。差し出された右手を握り返す。

 おおうっ、掌は人間と同じだ。まあ、そうだよな。RPGでミノタウロスって武器持ってることが多いけど、蹄じゃなくて人間の手じゃないと物を持てないよな、とか考えてると…。


めきょ…


 不穏な音がヨアンさんとの握手してる俺の手から…。恐る恐る見ると俺の右手の指が曲がってはいけない方向に、まるでコメディーのように曲がっていた。



ノォォォォォォォォォォォォ!!



「痛い!?めっちゃ痛い!ぎぶぎぶきぶ…!!」


 ヨアンさんの腕を小刻みに叩くと、気付いてくれたのかヨアンさんが慌てて俺の手を離してくれた。痛みのあまり踞る俺。そんな俺をヨアンさんが気遣う。


「おお!申し訳ない!力加減を間違えた!すまん匠くん!大丈夫かね!?」


 いやいや、力加減間違えて人の手を握り潰すって、どんな力持ちなんですか!?わざとじゃないよね!?

 ヨアンさん、俺の掌を見て


「いかん、折れている!…うーむ。ハニー、ちょっと来てくれ!」


 と何やら考えて、フォルムング家の中に呼び掛けた。誰を呼ぶの?痛いから病院につれてって…。痛いよー!


「なあに、ダーリン♪…あら、ダーリンまたやっちゃったの!?」


 ヨアンさんに呼ばれて出てきたのは、リーナさんの目付きを鋭くして少し年をとらせた美人さん。俺の傷付いた掌を見るためにしゃがむと、リーナさんと同じ亜麻色の髪がふぁさっと広がり、俺の鼻をリーナさんとはまた違う良い香りがくすぐる。

 お姉さんと言われても信じれる見た目だが、もしかしてリーナさんのお母さん?たしかリリアナさんとかいったっけか?痛たた…。

 …っていうか、今『またやっちゃった』とか言ったよね?確信犯ですか?再犯ですか?!


「そうそう、またやってしまってね。

こちらイリーナの言ってた葛葉匠くん。こちら、私のスイートハニー♪のリリアナだよ」


 いやいや、『またやってしまってね』じゃないよ!ヨアンさん自己紹介より俺を病院につれてって!右手が腫れてきたよ!


「あら、貴方がリーナの言ってた匠くんね♪よろしく♪

じゃあ薬塗るからじっとしててね♪」


 いやいや、骨折は塗り薬で治らないから!病院がダメなら救急車を!!は、早く!!


 リリアナさんは踞る俺の右手の甲に何処からか取り出した塗り薬をぬりぬり…。


 そんなので治らないって、いだだだっ…………………!















 …あれ?治った!




 恐縮して二人で苦笑いをうかべるフォルムング夫妻。牛って笑えるんだ…。


「いやー、すまんね。イリーナの初めての友達と聞いていたから嬉しくてね。つい力が入ってしまってね。すまんすまん」


「もうダーリンったら♪ご免なさいね、匠くん」


 人の手、握り潰しといてうっかりで済ますのか…。…いや、突っ込んだら負けな気がする。(何故か塗り薬で)骨折も治ったことだし、ご近所さんだし、リーナさんのご両親だし、未来のお義父さんとお義母さんだしゲフンゲフン…。

 …まっ、済んだことだし、改めて挨拶しますかね。立ち上がりスラックスの汚れを払う。ほんでもってお辞儀。それからリリアナさんに握手ために手を差し出す。


「あの、隣に住んでる葛葉匠です。リーナさんとは縁あってお友だちになりました。学校も同じ学年でクラスも一緒です。宜しくお願いします」


 リリアナさんは俺の手を取り、リーナさんに勝るとも劣らない優しげな笑顔でニッコリと笑った。…この人は俺の手を握り潰さないだろうな…?

 俺の心配が顔に出たのか、リリアナさんは悪戯っぽく笑うと「私は非力よ♪」とそっと囁いた。


「ダーリン、匠くんが来てくれたということは学校へ行く時間じゃないかしら?」


「ん?ああ!そうだね。たしかイリーナは地下室の片付けをしてるんだったね。僕が呼んでくるよ、ハニー。

匠くん、悪いが少し待っててくれないか。イリーナを呼んでくるから」


 ヨアンさんはフォルムング家の中に入っていった。途端にリリアナさんの雰囲気が変わる。


「…貴方、本当に面白いわ。悪魔憑デモニックき」


 …そう、それは“良家の奥様”から“尊大な王女”へと…。


「憑かれてるくせに、何の精神干渉も受けてはいない。なのに周りの変化は見える。

貴方は、匠くんは、どんな特異点フォーチュンを持っているのかしら?」


 先程のヨアンさんにメロメロな人とは別人のように、傲慢な態度で腕を組む。リーナさんに負けず劣らずの大きな胸が強調される。


 …見ちゃうんだもん…。…目が行っちゃうんだもん…。…男の子だもん…。


「正直、私の使い魔の末席にでも加えてみたいけど、リーナが貴方を狙ってるのよね。

…様子を見てリーナの手に余るようなら、その時は考えてあげてもいいわ」


 この感じ、リーナさんのもう一つの人格にそっくりだ。…そういえば、リリアナさんは体のどこにも異形がない。ということは…


「…魔女…」


 思わず呟いた一言にリリアナさんが、我が意を得たりとばかりに妖艶に微笑む。なんかヤバイ!汗が止まらない!


「ほほっ!!これだけのヒントでその答えが導き出せるとは、あながち馬鹿でもないらしい。

愉快愉快♪…なれど娘の手前、お手付きは愚の極み。匠くんがどのように成長するか観察させてもらいましょう。おほほほほほ…!」


 リリアナさんは口に手の甲を当て高笑いをする。俺は嫌な汗を流しながらそれを眺めることしかできなかった。



  








  

 

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