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無常ということ

作者: 千嶋桂華

今日死んだ愛犬の亡骸と共に

この糞暑い中真夏の大三角形の下

空を見つめて星を眺める。

          犬

私が生まれるずっとずっとずっとずっとずっと...

「ずっと」を一生打ち続けなくてはならないほど、ずっと前から

あの星は無意味にキラキラ光っているのだ。


そんなことを考えながら私は

随分前に友人に貰った飴袋を破る。

          袋

中から出てきたイチゴ味の飴は

自分が存在することをまるで常識のように佇んでいるが

まあそんな幻想はぶち破る。

          夢

ガリッと小気味良いんだが悪いんだか分からない音を立てて

真っ赤な飴は微妙に醜く割れた。

          飴

飴をがりがり砕きながら河原を歩くと

足元に小さな沢ガニがいた

ここは随分綺麗な川なのだと関心してたら

下方不注意でそのカニを踏み潰した。

          蟹

電柱に張られたこのチラシ

迷い犬探しの普通のチラシだがそこに写っているのは

今日見事殺された我が愛犬じゃあないか

何でこいつの写真がここにあるんだろう

とりあえず剥がしておいた。

          紙

途中くすぶっている煙草が落ちていたが

まあ私には関係ないよなぁと思い放っていたら

後ろからなんだか焦げ臭い匂いがする。

風に流され蟻の行列に乱入したらしいその煙草は

数多の蟻生をめちゃくちゃにしながら燃え尽きた。

          蟻

そういえばさっきの迷い犬のチラシ

2日前から行方不明とは随分最近のことだ

道草でも食っているだろう我が愛犬は

彼らに見つけられないままだ。

          

飴をくれた友人はどこへ行っただろう

先ほどまで傍にいて飴をくれた筈なのに

手の内にある袋を握り締めると

なんだが中にあるものが暖かくて安心する。

          友

先ほどから足に群がってくるこの虫は何だ

何度振り払ってもやってきて

まるで終わりが無いかのよう。


おや、袋から水が漏れている

水が滴らないように手を翳すが

残念ながら人間の手は水をうけるようにつくられていない

見ろ、こんなに流れてしまう。

          血



嗚呼

俺は冷たい袋を持って海辺に立ち

猫の屍と共に砂を眺めている

砂には多くの亀の死骸が転がっており

煙管の煙はやはり亀にも有害なのだと思った。



世界が移り変わる

善から無へ

理から魔へ

くるくるくるくる

どれ一つとして、永遠など無いのだ。




あ、星が流れた

冬の大三角形の星の一つだろうか

可哀想に。


          星



だけは永遠かと思ったのに。




何が一番くるくる変わっているかって

そりゃこの独白を言っている奴の思考回路だよなぁ

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