幕間|取材
今日も、朝から忙しい。
音楽雑誌。
Web媒体。
立て続けの取材。
撮影。
ライブ。
その合間に、練習。
スケジュールは隙間なく詰められ、
切り替える余白は与えられない。
スタッフ。
編集者。
スタイリスト。
カメラマン。
イヤーモニターのチェック音。
レフ板が動く、乾いた擦過音。
無線の短い呼び出し。
数字と時間だけをやり取りする声。
空気は絶えず動いているのに、
落ち着く場所は、どこにもない。
用意された衣装に袖を通す。
整えられた状態で、椅子に座る。
「少しだけ顎を上げてください」
「はい、そのまま」
「次、目線こちらです」
三人での撮影。
立ち位置を合わせ、
同じ照明を受ける。
確認は、短い。
個人撮影に移る。
順番に呼ばれ、
同じ指示が出る。
ハヤテ。
コウタ。
終了。
ヒナタは、残る。
光が組み直され、
レンズが替えられる。
確認が入り、
もう一度。
時間だけが、進む。
三人での取材。
質問は順に回る。
形式は、平等だ。
ヒナタのところで、
数が増える。
質問の数が違う。
割かれる時間が違う。
向けられるレンズの数も、
角度も、
明らかに違う。
掘り下げられるのは、
いつもヒナタの答えだ。
考える間は与えられるが、
迷う時間は想定されていない。
沈黙すら、
意味のあるものとして扱われている。
ヒナタは、
淡々と、
求められた受け答えを返し、
指定された立ち位置に立ち、
指示された通り、視線を動かす。
余計な言葉は足さない。
感情も、表に出さない。
仕事として、
やるべきことを、
ただ正確にこなしている。
フラッシュが焚かれるたび、
シャッター音が重なっていく。




