共通点の増え方
「そういえば、宵子さんは甘いもの、よく食べるんですか」
「好きです。でも、見る方がもっと好きかも」
「分かります」
思わず笑ってしまう。
「ショーケースって、ちょっとした舞台みたいですよね」
「そうそう。選ばれる前の時間が一番きれいで」
言葉が重なるたびに、小さな発見が積み上がっていく。
「音楽は聴きます?」
「夜に、静かなのを少しだけ」
「あ、僕もです。歌詞がうるさくないやつ」
「それ、すごく分かります」
宵子は少し身を乗り出して言った。
「感情を押し付けられると、疲れちゃって」
「同じです」
まただ、と思う。
偶然にしては、多すぎる。
次に会う理由が、
いつの間にか、増えていた。
「この本、読み終わったら感想聞かせてください」
「じゃあ、交換しましょうか」
「いいですね」
本を介して、日付がつながる。
数日後。
また別の日。
「この前言ってた焼き菓子のお店、行きました?」
「行きました。あれ、反則ですね」
「ですよね」
会話の端々に、前の時間がちゃんと残っている。
コウタは気づく。
日々の輪郭が、少し柔らかくなっていることに。
何でもない帰り道。
いつもなら素通りしていた景色が、なぜか目に留まる。
「今日は、いい日でしたね」
宵子がそう言う。
「……はい」
本当だ、と思った。
大きな出来事はない。
でも、確かに、彩りが増えている。
この人と話す時間が、
自分の日常に、静かに染み込んでいく。
まだ、恋だとは言えない。
けれど。
もう、戻れない気がしていた。




