幕間|パフェ
ライブ終わりの帰り道、ハヤテが当然のように足を止めた。
「なあ、今日、寄ってく?」
指差した先は、駅前の小さなカフェだった。
ショーケースに並ぶケーキを、コウタは一瞬だけ見てから肩をすくめる。
「……甘いの、得意じゃないって言っただろ」
「知ってる。でも前より顔しかめなくなった」
そう言って、ハヤテはもう店のドアを開けている。
小さなテーブル席に座り、コウタは無難そうなチーズケーキを選んだ。
ハヤテは季節限定だという、やたら甘そうなパフェだ。
「それ、一人で食う量じゃないだろ」
「だから一緒に食うんだろ?」
スプーンを差し出され、コウタは少し迷ってから受け取る。
口に入れると、想像よりも甘さは控えめだった。
「……悪くないな」
「だろ。疲れてるときは、こういうのが効くんだって」
ハヤテはそう言って、窓の外を見た。
夜の街に、ライブ帰りの人波が流れていく。
「昔さ、甘いもん食う余裕なかったよな」
不意に言われ、コウタはスプーンを止める。
「余裕っていうか……考えることが多すぎた」
「今は?」
少しの沈黙のあと、コウタは小さく息を吐いた。
「全部解決したわけじゃない。でも、甘いって感じる余白はできた」
ハヤテはそれを聞いて、満足そうに笑う。
「それで十分だろ」
帰り際、コウタはショーケースをもう一度見た。
次は、別のケーキも試してみてもいいかもしれない。
そんなことを思った自分に、
少しだけ驚きながら。




