表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Snow flakes   作者: 山吹 ことり
リトルスノー編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/93

声をかけたあと

 改札を抜けたところで、声をかけられた。


 「……偶然」


 振り返る前から、誰の声かはわかっていた。

 小さい頃から、何度も名前を呼ばれてきた声だ。


 「時間あったら、……ご飯、行かない?」


 ヒナタは、少し息を切らした様子で立っていた。

 コートの肩に、溶けきらない雪が残っている。


 「……急だね」


 そう言うと、ヒナタは困ったように笑った。


 「うん。

 だから、断ってもいい」


 その言い方が、昔から変わらない。

 肝心なところで、必ず相手に選択肢を残す。


 小雪は一瞬だけ迷った。

 仕事帰りで、頭の中はまだ音のことでいっぱいだった。


 スタジオの残響。

 未整理のメモ。

 イヤホン越しに聴いた、いくつもの未完成な声。


 「……少しだけなら」


 そう答えると、ヒナタは目に見えてほっとした顔をした。


 「ありがとう」


 ありがとう、にしては少し重い声だった。


 並んで歩き出す。

 夜の空気は冷たく、雪はまだ降るかどうか迷っているみたいだった。


 「最近、どう?」


 ヒナタが、なるべく普通のトーンで聞く。


 「相変わらずだよ。

 音ばっかり」


 「仕事だもんな」


 その一言に、説明は要らなかった。

 昔から、ヒナタはそうやって理解してくれる。


 交差点を渡りながら、小雪は思う。


 ヒナタとは、

 いつから一緒に音を聴いてきたんだろう。


 ラジオの前。

 カセットテープ。

 夜更けのヘッドホン。


 時間の長さを数えなくても、

 共有してきたものの重さだけは、確かだった。


 ヒナタが、少しだけ歩く速度を落とす。


 「あの、さ」


 声が低くなる。


 「今日さ……」


 小雪は足を止め、

 まっすぐにヒナタを見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ