叩ける
スタジオのスピーカーから、
小さなノイズと一緒に、イントロが流れた。
ハヤテは最初、
いつものようにドラムスティックを指で転がしていた。
リズムを探すときの癖だ。
Aメロが終わる頃、
その指が止まる。
「……あれ?」
小さく、間の抜けた声。
でも、目はスピーカーから離れない。
サビに入る。
静かに 静かに
降り積もる リトルスノー
ハヤテは、思わず背もたれにもたれかけた。
「なにこれ……
ヒナタ、今日どうした?」
冗談めいた口調なのに、
笑ってはいなかった。
この白さを
君が ほどいてくれたら
ハヤテは、ゆっくり息を吐く。
「……ずる」
コウタが、小さく目を細める。
「だって」
ハヤテは照れたように頭を掻いた。
「いやさ、
告白じゃないのにさ」
「逃げてるみたいで、
一番前に出てるじゃん」
「でもさ。
逃げてない」
ヒナタが顔を上げる。
「恋の歌だろ」
コウタが、短く言う。
「……そうじゃない」
「でも、
受け取る側に、余白がある」
ハヤテは少し考えてから、
いつもの調子に戻す。
「うん」
スティックを軽く叩き、
リズムを刻む。
「これ、叩ける」
「派手にはしないけど、
雪みたいにさ、
気づいたら積もってるやつ」
それから、
少しだけ声が低くなる。
「ヒナタの歌だって、
ちゃんとわかる」
「コウタの言葉じゃないし、
俺のリズムでもない」
一拍、間を置いて。
「だからさ」
「三人でやろ」
ヒナタは、その言葉にだけ、
はっきりとうなずいた。




