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幕間|鳴らせる場所
ハヤテは、スマホを片手に街を歩いていた。
地図アプリを閉じては開き、
川沿いの写真を何枚も見比べる。
「……ここ、いけそうだな」
橋の下。
音が反響する。
人の流れも、そこそこある。
ダメ元で、管理事務所に電話をかける。
「すみません、
ちょっと聞きたいんですけど」
断られることの方が多い。
でも、声のトーンは変えない。
「はい、そうです。
三人組で、
アコースティック寄りで」
通話を切って、
息を吐く。
「……ダメか」
次へ行く。
別の日。
別の橋。
通行人に迷惑にならない時間帯。
音量。
機材。
頭の中で組み立てながら、歩く。
気づけば、
何本も橋を渡っていた。
夕方。
スタジオに戻る。
「どうだった?」
ヒナタが聞く。
「何件か、手応えあった」
ハヤテは、
少しだけ笑う。
「ちゃんと聴いてくれる場所、
絶対あるからさ」
コウタは何も言わず、
ハヤテの手元のメモを見る。
橋の名前。
時間帯。
注意事項。
「……本気だな」
「当たり前だろ」
ハヤテは、
肩をすくめる。
「俺たちの音、
ちゃんと鳴らせる場所、探してるだけ」
その言葉に、
二人は何も返さなかった。
代わりに。
次に鳴らす音が、少しだけ強くなった。




