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Snow flakes   作者: 山吹 ことり
大学編

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32/96

幕間|現場

 ライブが終わったあと、

 ステージ裏はいつもより慌ただしかった。


 片付けの音。

 話し声。

 アンプの電源が落ちる低い音。


 ヒナタはギターをケースにしまいながら、

 無意識に周囲を探していた。


 小雪。


 卓の近く。

 スタッフと並んで、メモを確認している。


 「さっきの三曲目」


 先輩らしきスタッフが、卓のほうを見たまま言う。


 「サビ前、ベースちょっと出てたな」


 小雪は手元のメモを見て、静かに頷く。


 「後半のギター、

 ディレイは少し浅めでもいいかもしれません」


 名前は呼ばない。

 声も、控えめだった。


 一瞬だけ、ヒナタと目が合う。


 小雪は小さく会釈して、すぐ視線を戻した。


 「全体は、すごく良かったです」


 それだけ添えて、先輩の後ろに下がる。

 それで終わりだった。


 昔みたいな、探るような視線もない。

 音に耳を澄ます沈黙もない。


 今の小雪は、完全に仕事の顔をしている。



 嫌なわけじゃない。

 冷たいとも違う。


 ただ。


「……遠いな」


 思わず、独り言がこぼれる。


 近づけない距離ではない。

 でも、踏み込む隙がない。


 ハヤテが横を通り過ぎながら、

 ちらっとこちらを見る。


 何も言わない。


 その沈黙が、余計に効いた。


 小雪はすでに別のスタッフと話していた。

 次の現場の話。

 次の音の話。


 ヒナタはケースを持ち上げて、深く息を吐く。


 会場の雑音は遠のき、

 ヒナタの耳には、もう届いていなかった。


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