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幕間|間
言葉を手放したあと、
音は思っていたより静かだった。
ギターを抱えているのに、
何か一つ、
抱えていた重さが抜けた気がする。
コウタに預けたことを、
後悔はしていない。
むしろ、自然だった。
ヒナタはスタジオの床に視線を落とす。
ケーブルの脇に、
誰のものか分からないピックが一枚、
無造作に転がっていた。
それを見た瞬間、
昔の光景がよぎる。
放課後の教室。
机の下に転がっていた消しゴム。
拾い上げるより先に、
名前を呼ばれたこと。
ふと、顔が浮かぶ。
それだけの記憶だった。




