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Snow flakes   作者: 山吹 ことり
大学編

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24/54

もう一度、その名前で

 スタジオを出ると、

 夜の空気は思ったより冷えていた。


 さっきまで鳴っていた音の余韻が、

 まだ耳の奥に残っている。


「寒っ……」


 ハヤテが肩をすくめて、わざとらしく身をすぼめる。


「さっきまで汗かいてたのに」


 その声に、ヒナタは思わず小さく息を吸う。


 横で、コウタが空に向かって静かに息を吐く。

 白くなった吐息は、夜空にゆっくり溶けていった。


「……なあ」


 ヒナタが、歩きながら口を開く。


「さっきのやつ」


 ハヤテが振り向く。


「どうした?」


「悪くなかった、よな」


 コウタは歩幅を合わせたまま頷く。


「悪くなかった」


 ハヤテは笑った。


「高校んときより、正直だな」


 ヒナタはその言葉を噛みしめる。


「名前さ」


 ヒナタは、立ち止まって言った。


 二人も足を止める。


「また、使うと思う?」


 一瞬、沈黙が落ちる。


 先に口を開いたのは、コウタだった。


「簡単には言えない」


 視線を落としたまま続ける。


「高校のときは、

 未完成でも名乗れた」


「今は?」


「今は、

 名前の重さが分かる」


 ハヤテが、少しだけ息を吐く。


「確かにな」


「適当に使ったら、

 それこそ逃げになる気がする」


 ヒナタは否定しなかった。

 それは、自分も感じていたことだった。


「でもさ」


 ハヤテが言う。


「今日、誰も名前呼ばなかっただろ」


「うん」


「それでも、音は揃った」


 ヒナタは、小さく笑う。


「ずるいな、それ」


「だろ」


 ハヤテも笑う。


 コウタは少し考えてから、ゆっくり言った。


「……条件付きなら」


 二人が振り向く。


「条件?」


「この名前を使うなら」


 コウタは、はっきりと言った。


「一人で背負わないこと」


 ヒナタの胸が、少しだけ締まる。


「高校のときみたいに、

 勢いで引っ張るんじゃなくて」


「三人で、音を選ぶ」


 ヒナタは、深く頷いた。


「それなら」


 ハヤテが、軽く拳を握る。


「やれる気がする」


 三人の間に、静かな納得が落ちた。


 まだ、正式に名乗ったわけではない。

 どこかに書いたわけでもない。


 それでも。


 「……スノーフレークス」


 ヒナタが、試すように言う。


 コウタは目を閉じ、

 ハヤテは少しだけ笑った。


 そして同時に。


 「悪くない」


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