雪の音を探して
冬の匂いが、校舎の隙間に残っていた。
空気は、まだ冬の冷たさを残している。
ヒナタはギターケースを背負い、
放課後の校舎裏を歩いていた。
特別な理由はない。
ただ、真っ直ぐ帰る気分ではなかっただけだ。
音楽室から、微かにドラムの音が聞こえる。
一定のリズム。無駄がなく、少しだけ強気な叩き方。
「……やっぱり、いるか」
ヒナタは小さく笑い、音のするほうへ向きを変えた。
校舎裏から回り込み、建物に沿って歩いていく。
ほどなくして、古い音楽室の前に辿り着く。
扉の前で、足を止めた。
中にいたのはハヤテだった。
制服のネクタイを緩め、汗をかきながら、
楽しそうにスティックを振っている。
「お、ヒナタじゃん。どうした?」
「いや、なんとなく。音が聞こえたから」
「なんとなくで来る場所じゃねえだろ、ここ」
そう言いながらも、ハヤテは叩くのをやめなかった。
そこへ、もう一人が顔を出す。
「うるさいと思ったら、やっぱりハヤテか」
本を片手に立っていたのはコウタだった。
表情は淡々としているが、
目はしっかりと二人を見ている。
「お前も来たのか」
「返却期限が今日までだっただけだよ。たまたま」
三人が揃うのは、珍しいことではない。
けれど、こうして放課後に集まるのは、どこか特別な感じがした。
「なあ」
ヒナタは、ギターケースに手を置いたまま言った。
「もしさ、三人で音出したら、どうなると思う?」
一瞬、空気が止まる。
ハヤテはにやりと笑い、
コウタは少しだけ考えてから答えた。
「……悪くはなさそうだね」
ヒナタはケースを開き、
まだ誰にも聴かせたことのないコードを鳴らす。
ハヤテのスティックが、
少しだけ強く机を叩く。
音は、
思ったよりも遠くまで響いた。




