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幕間|いい風
昼休み、廊下を歩いていると、知らない名前で呼び止められた。
振り返ると、違うクラスのやつが立っている。
「ハヤテ!昨日の音楽室のさ」
それだけで、何の話か分かった。
曲名は知られていなかったし、名前も少し違っていた。
それでも、「暗いけどよかった」とか、「最後のとこ好きだった」とか、
言葉の芯は、だいたい同じだった。
放課後も、似たような声がいくつか届いた。
階段ですれ違いざまに。
昇降口で靴を履き替えながら。
噂というほど大げさじゃない。
ただ、風みたいに回ってきて、またどこかへ抜けていく。
悪くないな、と思った。
褒められたからじゃない。
音が、ちゃんと外に出た感じがしたからだ。
知り合いとすれ違い、短く手を挙げる。
また誰かが何か言いかけて、笑って去っていく。
ハヤテは、立ち止まらずに歩く。
流れてきたものは、そのまま流す。
そこから、必要なものを拾っていくのは得意だ。




