表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Snow flakes   作者: 山吹 ことり
ポジション編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/104

衝突

 スノーフレークスのスケジュール表は、

 赤で埋まっていた。


 リハ。

 ライブ。

 打ち合わせ。

 締切。


 その合間に、

 ヒナタの外部案件が、

 青でねじ込まれている。


 「……これ、無理だろ」


 コウタが言った。


 珍しく、強い口調だった。


 「削れるの、どこ?」


 ヒナタは資料から目を離さない。


 「削れない。全部、動いてる」


 「スノフレも動いてる」


 空気が、ぴんと張る。


 ハヤテは二人の間に視線を落としたまま、

 黙っていた。


 「外の仕事、今月、入れすぎだ」


 コウタが続ける。


 「分かってる」


 ヒナタは即答した。


 「でも、今、断れない」


 「なんで」


 一拍。


 「今、俺がやらないと、

  この流れ、切れる」


 コウタは言葉を探す。


 「……それ、スノフレより大事って聞こえる」


 ヒナタの手が、止まった。


 「そういう言い方、するなよ」


 「じゃあ、どういう言い方ならいい」


 コウタの指先が、机をトンと叩いた。


 「俺たち、今、どこに立ってる」


 沈黙。


 ハヤテが、ようやく口を開く。


 「待って」


 二人を見る。


 「先方、スケジュール、

  これ以上は動かせないって」

 

 ヒナタが顔を上げる。


 「……もう?」


 「もう」


 ハヤテの声は落ち着いているが、硬い。


 「スノフレ側も、箱、押さえ直せない」


 板が、ぎし、と鳴る。


 「どっちも、落とせない」


 ハヤテは、自分に言い聞かせるように言った。


 「だから、どっちかを優先するしかない」


 ヒナタは、しばらく黙ったあと、低く言った。


 「……俺が、分身できたらいいのにな」


 コウタが、苛立ちを抑えきれず言う。


 「冗談にするな」

 

 「冗談じゃない」

 

 「じゃあ、スノフレは、誰が背負う」


 沈黙。


 ヒナタの肩が、わずかに動いた。


 「俺が背負ってる」


 ヒナタが、初めて声を荒げた。


 「……ずっと」


 ハヤテが、一歩前に出る。


 「ヒナタ」


 名前だけ。

 それ以上、言えない。


 コウタは、拳を握る。


 「……一回、決めよう」


 二人を見る。


 「今月、何を優先するか」


 ヒナタは、答えられなかった。

 答えた瞬間、どちらかが、壊れる気がした。


 沈黙の中で、

 ハヤテだけが、現実を見ていた。


 どちらを選んでも、誰かが傷つく。

 それでも、決めなければ、全部、落ちる。


 コウタは、

 天井を見上げて深く息を吐く。


 「ちょっと、

  ……頭冷やしてくる」


 コウタが、スタジオを出る。


 時計の針の音が、

 やけに大きかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ