第七幕: 箱のパーティ、ノートに刻む言葉
やあ、坊や。時は残酷すぎていく。第六幕の予言から、箱の中の日常へ。ダンケリットは葉っぱドレスを縫い、ジェイを呼んでパーティ——指のカップと耳つねの応酬が、二人の時間を紡ぐ。
ねえ、坊や。時は残酷すぎていく。
物語なら永遠だけど、
人の世は無常。あたしらも。
刻々と近づく現実よ。
時よ止まれと叫びたい。
第六幕は、ジェイことジェームズに、死んだ夢の代わりに新しい夢の種を植えつけた。海賊の夢なのさ。
片腕フックの大悪党。ーーそうよね。
えっと、
ーーそれからなんだっけ?
いま、記憶のあたしがいる所は?
語り部のあたしよ!
あたしは満足。
なぜの、なぜなぜ、なぜかって?
あたしは今は箱の中。
キレイな葉っぱが用意され、
即席ベットが作られた。
腐ったドレスはオサラバさ。
その日は、決めたの、作ること。
リーフのドレス、ワンピース。
華やか、きっと、あたしは女王!
鼻歌混じりのステップ踏んで、
箱の中はパーティ会場。
おお!我がしもべよ、マヌケさん。
女王陛下がそなたを呼ぶぞ。
「ジェームズ!飲み物が足りないわ!キレイな水を飲みたいの。それから、ティーを用意して!ジェームズ!」
あたしは、箱の中から、あの子を呼んだ。この部屋に来て、かなりの日が経ったと思う。
子どもの集落『石の巣』の中、この子部屋の寝床のそば
お菓子の箱が、あたしのお部屋。
この部屋にはお気に入りの寝床が一つ。今日はキレイな葉っぱでも、明日は枯葉の寝床かも。
マトモじゃないなんて言わせない。
誰にもね。
「ダンケ。君はボクを使用人かと思っている。ボクは貴族なんだ。いずれは海賊なるけどさ。」と、この子は歌う。黒い髪は肩まで伸びて、動くたびに蛇が舞う。石の巣の子どもらが着てる服を誇らしげに撫でてた。
彼は洗練な動きで水入りカップから、指に水玉をつけるのよ。
この子の指は、あたしのカップ。
おしゃれな指よ、
この指、好きよ。
喉の渇きを潤して、
あたしは葉っぱのドレスを考える。
とっても慎重にやるから。
丁寧に、葉っぱの強度を確認中。
「海賊になるとしてもさーー」とマヌケがあたしの邪魔をする。
「なーに、ジェームズ。」と葉っぱを放って、彼の肩に飛ぶ。
だって、この子は話をしたかった。
あたしも、そうよ。そんな気分。
「海賊にになるとしても、父と兄は許さない。ボクの夢は、君との夢さ」
あたしは彼の耳をつねる。
「あんたの名前はジェームズ。
つまり、あんたは、あんた。
そんな奴らは、けとばすの。遠くの地平線までけとばすの!」
なんども、同じ、この話題。
この子は困った風に微笑む。
ごまかし混じりのマヌケ顔。
「ずっとあたしが、ずっとあんたのそばにいたら。何度も何度も繰り返す。けとばせって、言ったげる。だけど、あたしもヒマじゃない」
あたしは、彼の机に置いてあるノートまで飛んでいく。
「大切なことは書いておく。忘れちゃダメよ。この言葉。きっと、あなたは大海賊!」
あたしはノートを開いた。
だけど、字なんて書けないの。
「声でかけたらいいのにーー」
すると、彼が隣に来たわ。
そっと、可憐な手つきで、
ノートに文字を書いている。
「書きたいことは、なんなんだい?」
あたしは微笑む。
「ねぇ、ジェームズ。こう書いてーー」
(こうして、第七幕は、二人のノートとして閉じられる)
第七幕は、二人のノートとして閉じる。けとばせの言葉を書き留めようとするダンケリット——この共有が、永遠を封じるのか、無常を呼ぶのか。次幕では、怒鳴り声が近づく。君の時間は、止まる?