第六幕: 歌う予言、蛇の視線
やあ、坊や。夢はなんだい? どれだけの夢が、あんたにある? 第五幕の宣告から、ジェイの混乱にダンケリットは歌う。海軍の隷属を嘲り、海賊の種を植える——フックの黒いダイヤが、予言として輝く。
ねえ、坊や。夢はなんだい?
どれだけの夢が、あんたにゃある?
あたしの探した子には夢なんて一つもない。夢を持てるのは、幸せなことさね。
第五幕は、夢を見るはずの子どもの夢が、殺されてたことに、あたしがショックーー
えっと、
ーーそれからなんだっけ?
いま、記憶のあたしがいる所は?
語り部のあたしよ!
哀れな子どもが目の前で、
泣きそうになっている。
この子の部屋に、
あたしゃいるよ!
あたしの予言に、
子どもは息はできないは、
顔はくしゃりと歪むは、
下唇を噛むは、
もう、大混乱なのさ。
「このーーこのーー人でなし!」とあたしにいう。
「人でなしは、お互いさま。夢を死なせた人でなし!アンタのマヌケで、あたしゃ、大損さぁ。どうしてくれる、大マヌケ!ジェイ・フールっ!あたしゃ、これで帰られない!」
そうして、あたしゃの肩でわんわんと泣きだす。何もかもが悪い方。こんなに悪くなるの、不愉快よ!
「ご、ごめんーーダンケリット。君の黒髪、すごくキレイ。ボク、君をダンケって呼んでいい?」あたしの頬を指で突く。
この時、あたしはガブリッと噛みつくとこの子の血はドロっと一粒だけ流れた。ーーこんなはずじゃなかった。
そう、そうさ!
ほんの冗談さ。
「好きなように呼ぶがいい。あたしゃ、どうでもいいさ。そんなこと。」
あたしから噛まれた指はそのままで。
「ボクの夢は、
父と同じカイグンショウコウになる。
ーーそれしか道がない。
兄さんも、カイグンにはいる。
ボクらは、キゾクでキリツがあるんだ。」
少年はポツポツ語りだす。
別に聞きたかないは、そんなこと。
少年のポツポツに、
時々、あたしは合いの手うつ。
すると、わかった、この子の弱み!
アタシは嘲笑い、
彼のために歌ったのさ。
少年の夢は
父親と同じ海軍の道。
海賊たちを
追いつめ
縛り首にすること。
女王陛下や
父のような将校の
足の裏まで
舐めあげなきゃならない。
まったくイヤな夢なのさ。
将来は、兄の影。
のそのそついて、
囁かれる名はジェイ・フール。
「そんなのイヤだ!」とあたしが気持ちよく歌ってた詩をやめさせた。
不愉快だわ!
「だけど、ボクにはそんな道しか残されてない」とこの子は顔を下に向けた。
あたしは彼にいう。
「海賊の夢がある。きっとあなたは、残酷な海賊として歌われる」
この子は顔をあたしに向けた。
ゆっくりと、顔を上げる時、あたしは一瞬ドキッとする。
なぜ、なぜの、なぜかって?
この子の頭に蛇が住む。
その蛇があたしを狙う気がしたの。
あたしは大笑い。
「臆病者じゃ話にならない。
賭けてもいい。
後世じゃあなたは大悪党。
誰もが避ける鼻つまみ。
そうね。」
彼女は少年の髪を掴む。
怖くなんかない。ただの髪の毛。
蛇じゃない。
「例えば、片手がフックの
黒いダイヤなんて名前はどう?」
あたしから髪を取り返しながら、
この子は聞き返す。
「フックだって?
強そうだけと、なんだか怖い。
ボクの手は切り落とされたくないよ。
ーー誰に斬られるの?」
あたしだって知りたいさ。
「さあ、誰かしら。
それはきっと神のみぞ知る」
知ってても教えない。
教えてなにかもらえるの?
あたしは、少年の肩に座り込む。
「ねえ、ジェームズ。あたしゃ、眠いよ。寝床を作っておくれ。可愛い寝床をーー」
ーー長く旅をしてきたの。
その言葉を飲み込んだ。
(こうして、第六幕は黒い蛇の目で幕を閉じる。)
第六幕は、黒い蛇の目で閉じる。眠いよの囁きを飲み込んだダンケリット——このドキッとした視線が、絆の始まりか、破滅の影か。次幕では、葉っぱのドレスが舞う。君の歌は、何を予言する?