第二幕:炎の冗談、黒い羽根の逃亡
やあ、坊や。ほんのちょっとの冗談が、すべてを変える。ネバーランドの森の奥で、黒妖精のプライドが爆発する。インディアンのテントに火を放ち、鳥の羽根を投げて笑う——ダンケリットの破滅の予言が、ここから始まるさ。
はじまりは、
ほんのちょっとの冗談さ。
プライド高めなインディアン。
島を我がもの、大いばり。
そんなヤツらの鼻柱、
ひねってやったら、こ気味いい。
面白いと思ったんだ。
ーー本当さ。
第一幕では、黒い川の前で、
泣いてる子どもなんかに、
話を聞かせてやると、
言っちまった、言っちゃった。
だから、こうして話してる。
いま、記憶のあたしがいる所は、
ネバーランドの森の奥。
暗くてジメジメしてるから、
まともな連中きやしない。
そこに、あたしの巣があるの。
汚い葉っぱの寝床がずっと。
マトモじゃないなんて言わせない。
黄色の羽根や、青い羽根、
赤い羽根に、みどり羽根!
妖精仲間のあいつらは、
あたしをマトモに見たことない。
だって、あたしは黒妖精。
ついつい告げる、
ーー破滅の予言。
片腕無くすわ、近いうち。
こんな感じで、
痛い予言、
あんたにしちゃうかもしれない。
まあいいさ!
ネバーランドは悪夢の中。
海賊なんかが島にいたら、
少しはマシかもしれないわ。
マシって言葉がひっかかる?
なぜ、なぜの、なぜかって?
あたしゃ、
ネバーランドの奴らが嫌い。
インディアンの奴らも
妖精仲間も大嫌い!
虫ケラみたいに踏み潰す!
あたしを怖がり近寄らない!
どいつもこいつも、バカばかり!
だから、ちょっとだけ冗談みせてやったのさ。
ああ、そうさ。
あたしがやったのは、
インディアンのテントに火をつけた。
ちょっとしたもんさ。
めらめら燃えるテントから、
泣いてくるのさ。
呼ぶ声が。
ママを呼ぶ子供の声。
ヤツらの好きな鳥の羽根。
火元に投げて楽しんだ。
火なんて、
大きくさせなきゃな!
逃げたいなんて思わなかった。
故郷から!
そうさ、あたしゃ、黒妖精。
着の身、
着のまま、
気の向くまま!
ネバーランドを飛び出した!
(こうして、第二幕は鳥の羽根で幕を閉じる)
第二幕は、鳥の羽根の炎と共に閉じる。故郷を着の身着のまま飛び出したダンケリット——この逃亡が、自由か呪いか。次幕では、空のバイバイが続く。君の翼は、どこへ向かう?