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田中蓮の健康相談所  作者: ヒトラボ
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プロローグ

2025.9.9/読みやすいように改行をしました。

「もう、医者になるのはやめた」 

高校2年生の夏、地方の進学校に余裕で入学できた私は、親友のさとみに吐き捨てるようにそう言ったそうだ。

小学校、中学校で良績をおさめていた私は、将来のことなど想像もせずになんとなく毎日を過ごしていた。

高校1年生の夏、進路を決める際に何も考えていなかった私は両親の言われるままに医学部進学コースを選択。

もし国立の大学に進学出来たら学費も免除になる大学が多いと両親は大喜び。そして夏休み中・秋・冬に行われる全国統一模試の結果に顔面を思い切り殴られた。

2年生に進級する際に、担任からのギブアップ宣言を進められたが少しだけ意地を張った。

大好きだった漫画を読む時間を少しだけ返上し、英単語を覚えた。

晩御飯を食べた後は必ず2時間はゴロゴロしていたが、歴史系のYouTubeチャンネルを見るようにした。

入浴中は数学、寝る前は古典、起きたら生物、YouTubeチャンネル頼みだったが、自分では努力したつもりだった。

夏季二度目の全国統一模試。偏差値は58。

家から一番近い国立大学の医学部はE判定だった。

テストや模試の結果を見せっこしていたさとみは偏差値60。

看護師志望だったので、国立大学医学部看護学科の判定はAだった。

いままで思うようにいかなかったことが殆どなかった私は、

無性に腹が立ったようで、高校の帰り道のマクドナルドのダブルチーズバーガーを単品で4つほどやけ食いし、のどを詰まらせそうになってさとみにオレンジジュースを飲ませてもらっていた。

「まだいけるんじゃない?一年で偏差値10位上がった先輩もいるよ?」

公園のブランコを漕ぎながら励ます親友に、私は漕ぎもせずにその言葉を言い放った。


 あれから7年。医療系が安定すると両親にごり押しされた私は理学療法士になっていた。

さとみは一緒に看護学部に進学しようと進めてくれたが、注射をされるのが死ぬほどいやで全身に浮腫みが残ってしまうほど力んでしまう私には、考えられないことだった。

最後まで妥協的な私は、さとみと同じ大学の理学療法学科に進学した。

さとみと違い、大きな目標がなかった私には臨床実習を通過するのがかなりの苦痛だったが、ほぼ人受けの良さで情けをかけてもらい無事に卒業。

国家試験を通らなければただの人。

よく言われる最後の関門もギリギリの点数で、業界特有の入社後の合格発表まで殆どご飯を食べることができなかった。

トキの厚生労働大臣の名前が入った免許証をもらった時は、嬉しすぎて今までした記憶のないスキップをしながらコンビニにアイスを買いに行った。

「おつかれー」無事に看護師になり、夜勤を終えたさとみが優しいけど弱弱しい声でゆっくりと近づいてくる。

卒業後の就職は二人で大学病院を選んだ。

理由はなかった。強いて言うならさとみが行くからだ。

「朝からなんて顔なの?眉間のしわ、消えなくなるよ?」

夜勤明けなのに私を気遣うさとみに、

「技師長の顔見たくない。」と膨れて見せた。

「私だけ名前呼び捨てなんだよ?おかしくない?セクハラで訴えてやろうか?」

畳み込む私に、

「しょうがないじゃん!今年の新人歓迎会で、モテる男性の名前Number1だってネタにされてめちゃくちゃ気に入られちゃったんだもん!」

と疲れながらも優しく諭してくれるさとみ。

「男じゃないし!何がいいのかさっぱりわかんない!朝礼で目が合わないことを祈ってて!」

と吐き捨て、弱弱しくハイタッチしてリハビリ室へ向かった。

そう、私は女性なのにモテる男性の名前Number1の蓮。

ついでに言えば、医者で最も多いといわれる名字の田中。

田中連 24歳 女性 未婚 親友さとみ なのです。

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