田中の謎
さてさて河口さんは切腹を免れる事は出来るのでしょうか?
「ちょっとそこまで顔貸してくれる?」
書店から出てきた田中を見つけて近くのファミレスに呼び出した。
「ちょっと色々聞きたい事あるんだけど」
「河口さんって普段着攻めた格好してるんだね。びっくりした」
いやまて、今は着眼点そこじゃない。これは普段着じゃない。びっくりする点もそこじゃない。傷口に塩を塗り込めるな。
「これは断じて普段着ではない。仮初の姿だ」
「なるほど…学校だと全然雰囲気違うから…何か潜入捜査的な事でもやってるの?」
ぐぅ…痛い所を突いてきて更に傷口を広げるか貴様…
「んなわけあるか。まだ学生だわ。」
「なんかさっきから凄い怖い顔してるけど、俺は今ヤンキーに絡まれてカツアゲされようとしてる状況なんだろうか?」
お前はヤンキーと地雷系の区別もついてないのか?
てか普段の私は地味メガネでヤンキーからは対極だろ。
体育館裏には呼び出してない。ここはファミレスだ。
「それも違う。私は田中に聞きたい。何故あの場所であの本を手に取っていたかだ。」
「あ〜咲穂ペロリ先生のね。今日新刊発売日だから書店特典も欲しくて買いにきたよ」
なんか華麗に爽やかにサラッと答えやがった…
しかも目的全く私と同じじゃないか…
「ふむ…理解した…田中は同志だ。認めよう。」
「何か分からないけど、それはどうも。」
「因みにこの格好の事は口外禁止ね。恥ずかしいから。でも派手に変装したつもりだったけどすぐ分かった?」
「う〜ん、まあ目元?メイクとかしてないよね。変装したいなら次は目元も変えた方がいいと思うよ?」
「成る程…ご忠告痛み入ります。」
「どういたしまして」
「ところでさ…田中って…そっちの人なん?」
「ん?そっちって?同性愛者って事?」
「うーん、まあちょっと気になって…買ってるやつがやつだから…なんか気分悪くしたら申し訳無かったけど…」
「いや別に。多分ちょっと違うかなあ…」
「じゃあバイ…とか?」
「多分それも違うかもなあ…」
「?」
田中…色々謎だ。