概要
静かな風が、草の大地を撫でていた。
緑に染まる草原の中央――そこにひとりの若者が膝をついていた。
剣を腰に、旅装に身を包む日本人がいた。
彼は、今まさに一つの世界の扉を叩こうとしていた。
雲ひとつない空。
遥か遠く、雷光がちらりと地平を裂いた。
「……雷の気配、あんなに近くに嵐はないはずなのに」
彼はゆっくりと立ち上がり、風に揺れる髪を押さえながら視線を遠くへと向けた。
風が語っているように思えた。
――その時だった。
「ッ……!」
振り返るとそこには、一体の魔獣。
異形の獣が、静寂を切り裂く咆哮とともに飛びかかってきた!
「来るか……!」
瞬間、男は身を低く構え、構えた。
(攻撃するか)
だが足りない。
一撃でこいつを倒す必要がある――その時だった。
◆
≪ 閃き:閃撃墜≫
――新たなる技が、記憶の底より呼び覚まされる!
◆
雷のように脳裏を貫いた感覚。
まるで誰かが、自分の腕に“撃ち方”を教え込んだ感覚に近い――否、自分の中に、それは“元からあった”。
「閃いたぜ……!」
稲妻のごとく拳を振るった。
蒼い光が一閃、獣を貫き――黒煙となって散った。
草薙はしばし静かに剣を見つめていた。
「……授かった感覚に近いな、いや……これは、俺の中に眠っていたものみたいだ」
遠雷がまた一つ、空に刻まれた。
まるでそれが、世界が草薙という存在の“起動”を告げる合図のように。
「風が教えてくれる。俺は、まだまだ強くなれる。
……いや、“思い出していく”んだ。これから、何度でも――」
風は、彼を導く。
数多の技と、数多の出会いと、そして数多の――戦いへと。
閃きが最強の礎となる。