古の大海賊
リビアがアルゴの名前を出した途端、賑やかだった酒場が水を打ったように静まり返った。
「何?この感じ?変なこと言ったみたいな雰囲気…」
重い空気の中カリーナが口を開いた
そして、酒場で飲んでいた男が尋ねた。
「いやー、まさかの名前を聞くとは思わなかったよ。お嬢ちゃん、まさかあの話を信じているのかい?」
男はまるで彼女の言葉を嘲笑うような君の悪い笑みを浮かべていた。
そんな君の悪い笑みを吹き飛ばすように、リビアはハッキリと答えた。
「あぁ、もちろんだ、海を隅から隅まで渡り、全ての島を巡り、神の魂を手に入れたと言われる伝説の海賊団、『べアドロック』の秘宝だ!」
遥か昔、人が海を渡る方法を覚えた時代。
多くの人々が船を作り、様々な思いを馳せて未開の地へと旅立った。
その中で世界の果てを夢見る男がいた。
その男の名はアルゴ・ライアモンド
彼は同志を募り、船を作り海を渡った。進路を阻む者たちを片っ端から力で捩じ伏せ、宝の眠る遺跡の謎を解き明かした。
そして、その武勇伝に惹かれた者たちが彼の傘下に入り、海賊団は小島と同じほどの大きさにまでなり、海が続く限り船は進み続け、地球上のすべての島を渡ったと言われている。
飽くなき執念と野心で海を渡り続けた男は海や陸に眠る金銀財宝や不思議な宝、そして世界を自分の思うように変えることができると言われた「神の腕」を手に入れた。
しかし、その力を望む部下たちが謀反を起こし、争いが起こった。
三日三晩に渡る争いの末、突如現れた嵐と共に船は沈み、海賊団はあっけなく壊滅した。
そして、海賊団が集めた金銀財宝は今も海の底で眠っている
「…そして、数多の人間がその財宝を求め海を出たが、挑んだものは手ぶらで帰ってきたか、2度と帰ってこなかった。私はそれを手に入れる!大海賊の財宝を!」
手にしたグラスの酒を飲み干しながら言った。
男はブハハハハと汚い笑いを上げながらリビアに言い放った。
「女の癖にとんでもないロマンチストだ。どんな屈強な男どもが向かってもなんの成果もあげられなかったんだぞ!あんたらみたいなお嬢ちゃんに手に入れられるわけがないさ。」
リビアは眉ひとつ動かさず、冷静な態度で男に言い返す。
「フン、そいつらはアルゴのことを何も分かってなかったのさ!私はその船に向かい、全てを手に入れる」
男はその態度を見て、またニヤけながら口を出した。
「もったいないねぇ。こんなに綺麗な顔してんだ。若いうちにさっさと諦めるなら、俺の嫁にしてやるのに!」
そう言った瞬間、頬を触ろうとした男の手が払われ、男の眉間に銃口が突きつけられた。
酒場は一瞬ざわつき、息を呑む音があちこちで聞こえた
「ハッ、たいした度胸だね!私の浪漫を絵空事のように嗤っておきながら。私達に手を出すなら、それ相応の覚悟が必要だよ!」
男は腰が抜けたように近くの椅子にもたれ掛かった。
それと同時にリビアの肩から何かが乗る音がした。
「リビア、飲み過ぎ。こんな所で喧嘩しないで。」
リビアはカリーナに軽く笑いかけながら真面目な顔つきで答えた。
「なぁに、叔父さんの宿でそんな血生臭い事はしないさ。」
カリーナは寄ったリビアの腕を取って食堂を出るように促した。
「ヴェラ、リビアの事頼める?」
「わ〜かったぁ〜!」
「ごめん、やっぱピクシーお願い」
顔を真っ赤にして笑うヴェラを見て、ピクシーに船長を頼んだ。
しかし、ピクシーは3杯目のジョッキを腕に夢の中を漂っていた。
大きなため息をつきながら、ボランスに金貨の入った袋を差し出した。
「ごめんなさい、亭主さん。悪い噂つくようなことしちゃって、食事代と迷惑料です。」
「大丈夫。うちではこういう事は日常茶飯事だから。それにさっきも言った通り、今回は私の奢りだから」
ボランスは気にせんよと言わんばかりにガッハッハと笑うと、固まっていたウェイトレスに止まっていた料理の提供の再開を促した。
客はお酒や料理に手をつけだして、すぐに酒場には活気が戻ってきた
「またどこかで埋め合わせはしますから、ほら2人とも歩ける?」
カリーナはもう一度頭を下げながらリビアとヴェラに尋ねた
「あぁ、大丈夫だ!」
「アハハハー、たのしかったー!ごちそうさまー!」
そう言いながら笑うヴェラとリビアから目を離さないようにしながらカリーナは泥酔したピクシーを抱えて寝室へ向かった。




