学校での邂逅
「ふっ……!」
俺は清華に向かって木剣を突き出した。
清華はそれをまるで予知していたように──いや、実際に予知している通りにひらりと余裕を持って躱す。
そして返す刀で俺の首を刈り取ろうと木剣を振る。
俺は木剣を突き出したことで体勢から、無理やり重心を戻し、剣を受ける。
「なかなか、やりますね……っ!」
「そっちこそ……!」
俺達は木剣を打ち付け合う。
カン、カン! と木をぶつけ合う音が響く。
決着は、経験の差だった。
「ほっ」
「うわっ!?」
清華の足払い。
ちょうど攻撃の動作を終えた状態だった俺は簡単に足をすくわれ、床に倒れる。
清華が俺の顔の前に木剣を突きつけた。
「私の勝ちです」
「……参った」
俺は手を上げて降参する。
清華が手を差し伸べてきたので、俺は手を取って立ち上がる。
「どうぞ」
「ありがとう」
タオルを差し出してきたので俺は受け取って汗を拭いた。
汗ばんだ身体からは、何か知らないがいい匂いがする。
「これで七対三。私の勝ちですね」
「強くなりすぎだろ……」
誇らしげに胸を張る清華にそう言いながら、俺は地面に腰を下ろす。
凛華との色々を終えた今、清華の強さにはさらに磨きがかかっていた。
吹っ切れたのもあるが、強くなった大きな要因のひとつが、ユニークスキル『魔眼:万華鏡』に変化が起きたことだった。
今まで、清華は魔眼を万華鏡の清華を作ることに使ってきた。
しかし今、清華の魔眼は相手の未来を映し出す能力へと変化していた。
これが恐ろしく強い。
なにせ未来を見て、最適解を選び取って戦ってくるのだ。厄介なことこの上ない。
今の清華は、運命切断でさえも普通に避けられるようになっているくらいだ。
そこにSランクとしての経験や技量も合わさり、今では俺は一度も勝ち越せなくなっている。
「二人共、おつかれ。良くなってるよ」
俺達の模擬戦を見ていた白鷺先輩がこちらへとやってくる。
「清華ちゃんはだいぶ魔眼の使い方に慣れてきたね。このまま目の使い方に慣れていこう」
「はい」
白鷺先輩の言葉に、清華は頷く。
「星宮くんは……そうだね。まだ動きが粗いかな。魔力圧縮の力に頼りすぎて動きが大雑把になって、そこの隙を突かれてる。それと経験が浅い。でもこれは何度も私達と模擬戦をして、経験を積んでいけば解消されるよ」
「うっ、はい……」
清華と違って、ビシバシと厳しいことを言われた俺はシュンとなった。
でも、俺の改善点を見つけるたびに白鷺先輩は「また教えることが増えた」と嬉しそうになる。やっぱりスパルタだ。
「俺もまだまだだな……」
「でも、私が勝てるのはあくまで木剣だけの勝負になったときですよ」
落ち込んでいると、清華が俺の隣に腰を下ろしてくる。
「尊さんの強みは、基礎的な力が強いこと総合力が非常に高いことです。何でもありの実戦なら確実に私は負けてますよ」
「…………あの、清華さん。なんで手を握ってくるんです?」
俺の手の甲の上から被せるように、清華が指を絡めてくる。
俺が質問しても清華はニコッと笑うだけだ。
手を振りほどこうとしてもガッチリと手を掴まれているせいで振りほどけない。
凛華との戦い以降、なぜか清華の態度がやけに甘ったるくなっている。
やけに距離感が近いし、こうしてスキンシップもよくしてくるようになった。
「星宮くん、今度は私と一緒に模擬戦しようか」
いつの間にか俺の隣に腰を下ろしてきていた白鷺先輩が、俺の腕を絡めてきた。
顔こそ笑顔なものの、こちらはなぜか少し声に棘がある。
「いえいえ、実力も近い私の方が……」
「いやいや、師匠の私が……」
「…………」
「…………」
なぜかお互い笑顔の状態で見つめ合う清華と白鷺先輩。
「さ、さぁ! 修行を再開しましょうか!」
首筋に薄ら寒いものを感じた俺は、修行を再開することで事なきを得たのだった。
***
翌日、俺は学校に登校していた。
久しぶりの登校する日だ。
一週間ほど休んでいたので、そろそろ出てきて欲しいと新しい担任から電話が来ていた。
いつも通り授業を受けて、昼休み。
「星宮くん」
聞き覚えのある声がして教室のドアの方を見てみれば、そこには白鷺先輩がいた。
俺が気がつくと、白鷺先輩は胸の前で小さく手を振ってきた。
有名人がやってきたことで、教室がにわかに騒がしくなる。
「白鷺先輩」
「来ちゃった。一緒にごはん食べよ?」
「はい、もちろん」
俺は一も二もなく頷く。
先輩と一緒の昼食、断る理由がない。
別に誰かといっしょに食べる約束があるわけでもないし。
俺と白鷺先輩は廊下を歩く。
白鷺先輩は目立つ上に有名人だからか、廊下を歩くと視線を感じた。
「どこで食べます?」
「あ、今日はお弁当作ってきたから屋上で……」
どうやら先輩はお弁当を作ってきたらしい。
そう言って先輩が、明らかに一人では食べ切れないほど大きな弁当箱を取り出したときだった。
「──」
俺は見覚えのある顔に、足を止める。
それは相手も同様で、俺を見て足を止め、驚愕に目を見開いていた。
「お前……」
「君は……」
そこにいたのは、昨日難癖をつけてきた四人組パーティーのリーダー格、瓜生優弥だった。




