《OOPARTS:マナ・リボルバー》
「お、オーパーツ?」
俺は手の中のスチームパンクなリボルバーを眺める。
形状は映画などでガンマンが早撃ちに使っているリボルバーにそっくりだ。
通常、普通の銃火器が効くのは低ランクの魔物までだ。
そこからは外皮が固くなったり、図体がデカくなることで銃弾程度では有効的な攻撃とならなくなる。
高ランクの魔物に対して一体ずつミサイルを撃つのはコストが掛かりすぎるし、ダンジョン内でミサイルを撃つような空間もない。
だからこそ、冒険者はリサイクル可能な剣や斧と、生きているだけで自然回復するエネルギーを使用する魔法を主軸の武器とするわけだ。
話を戻すが、普通の銃火器はモンスターに対して有効打にならない。
果たしてこのリボルバーはどれくらいモンスターにダメージを与えられるのか……。
「Aランクだし、モンスターに対しても使えそうだけどな……」
しかし、通常弾一発につき魔力5か。魔法の中でもかなり低コストと言えるが、その分威力は知れているだろう。
モンスターに対しては徹甲弾か、破壊弾の方を主に使っていくことになるだろう。
だが、威力によって評価は変わるが、通常弾は対人戦においてかなり強い一手になるはずだ。
「……いや待て、拳銃が出てきたけど、これ法律違反とかにならないのか……?」
心配になったのでギルド長に電話して聞いてみた。
ギルド長からの話を要約すると、
・冒険者として、免許があれば銃火器の携帯は可能となっている。
・ただし、使用するのはダンジョン内、もしくは正当防衛時のみに限られる。
・みだりに公の場で取り出すのは、他の人間に恐怖心を与えるので禁止されている。
・ガチャから出たので、直ちには銃刀法違反にはならない。
ということを教えてくれて、免許も申し込んでくれた。至れり尽くせりだ。
あとはそこまで厳しい規定というわけでもないので、免許が発行されるまでの間、神王ダンジョンの中で使う分には特に問題はないそうだ。
免許が発行されるまでには二日ほど時間がかかるらしい。
ちょうどいい。その間にこのリボルバーの性能テストとか、いろいろやろう。
俺はベッドから立ち上がって神王鍵を取り出し、中に潜ろうとして……。
ガチャ。
ジト目のセレーネが中に入ってきた。
「何をしているんですか。今日は安静だと言いましたよね?」
「いや、新しい武器が増えたからちょっとだけ性能テストを……」
「駄目です。ダンジョンに潜るのは絶対に許可しません。管理者命令です」
「えぇ……それなら訓練場みたいなところで試し撃ちだけでも……中で色々とやりたいこともあるし」
「……」
俺がお願いするとセレーネは少しの間逡巡して、はぁ、と息を吐きだした。
「……ダンジョンに潜らないように、私が監視しますけどそれでもいいのなら」
「全然大丈夫、それならすぐに……」
「ただし、少しでもダンジョンに潜ろうとしたら、その瞬間夜ご飯抜きですから。あと危ない魔力の練習も禁止」
「はい……」
本当は昨日の魔力の圧縮をもっと練習しようと思っていたけど、無理そうだ。
俺はしょんぼりして頷いた。
セレーネには食事を握られているので逆らえないのだ。
そして俺は神王城に入った。
当然のように神王城には訓練場が存在していた。
扉を開けたそこには、体育館程度の広さの空間が広がっていた。
真っ白で特に特徴はないが、セレーネの説明では自分でカスタマイズできるらしい。
「ここが訓練場になっています。設定で訓練用の人形が出せますが、種類はどうします? 人間、ゴブリン、狼、ドラゴンと他にも形状はありますが」
「じゃあオーソドックスに人間で」
「はい」
セレーネが手を無造作に振ると、俺達から20メートルほど離れた場所に人型のマネキンが出現した。
俺はマナ・リボルバーを取り出す。
「魔力の装填は……こうか」
リボルバー本体に魔力を送ると自動的に弾丸が装填された。
弾丸を込めるのは、持ち手の部分に嵌められている宝玉から吸い取られる形式のようだ。
いちいち弾丸を抜いて装填する必要はないみたいでありがたい。
「まずは通常弾」
引き金を絞る。
パァンッ! と銃声が響いた。
「威力は普通の拳銃と同程度って説明がされてたし、やっぱりこの程度か。反動も普通の拳銃と一緒だから、俺のステータスでも十分抑え込める、と……。じゃあお次は徹甲弾だ」
弾を三つ消費し、徹甲弾を形成する。
すると銃身の先に細長い円錐型に魔力が収縮し──。
ッドン!!
さっきよりも強い反動で弾が発射された。
魔力で形成された徹甲弾はマネキンを難なく貫き、後ろの壁に突き刺さると、魔力の残滓となって消えていった。
この威力なら十分魔物にも通用するだろう。
最後は破壊弾だ。名前からして危険そうだが、一体どんな威力になるのやら……。
魔力ポーションで魔力を補給し、弾丸を装填する。
引き金を引いた。
ッドォンッ!!!
銃身の先にサッカーボールほどの魔力の塊が形成され、腕が跳ね上がるほどの反動と共に破壊弾が発射された。
サッカーボール大の弾はマネキンを貫くと、マネキンは爆散した。
その威力を見て、俺は感想を漏らす。
「……これ、もはや銃って言うよりは大砲だろ」
俺は破壊弾は人に向けないようにしよう、と心に誓いつつアイテムボックスの中にしまった。
新武器の性能確認を終えた俺は、工房へとやってきた。
工房の中では俺が作ったゴーレムがポーションを作っていた。
俺がここにやってきたのは、色々と作りたいものがあったからだ。
「ここで何をするんです?」
セレーネが質問してくる。
「ああ、ちょっとポーションのバリエーションを増やしたくて」
天狐との戦闘で実感したのは、俺の回復の遅さだ。
いちいちポーションを取り出して蓋を開けて飲むのは、あまりにも隙が大きすぎる。
だからこそ俺はその回復の時間を短縮したい。
「これにポーションを入れたいんだ」
俺はスマホの中に保存した画像をセレーネに見せる。
「これは……注射器ですか?」
「そうだ。ペン型の注射器なら、瓶を開けて飲む二つの工程を一つの工程に纏められるだろ?」
注射器と言っても一般的な注射器とは違い、ふとももや腕に自分で刺すのが簡単な、親指で押し込んで注射するタイプだ。
ポーションは普通の薬と違い、体内に入ればすぐに効果を発揮する。
その性質を活かし、瓶という割れやすい容器を嫌う冒険者は、このプラスチックで守られているペン型注射器でポーション持ち運ぶらしい。
もうすでにネットで100個ほど注文している。
金はそこそこかかったが、先行投資だと思うようにする。
俺は本棚から錬金術で作れるポーションの一覧が乗った本を取り出す。
「この注射器に入れれるような、濃いめのポーションを探しにきたんだけど……あったあった」
通常よりも少量で、ポーションと同じ効果を得られる《濃縮ポーション》なるものを発見した。全種類のポーションに存在するようなので、これからそれを用意しよう。
それともう一つ、《活力剤》という薬も発見した。
なにやら飲むと一定時間身体に活力が漲り、痛みや疲れを感じにくくなるらしい。
戦闘中の痛み対策も探していたが、ちょうどいい。
これも例のごとく濃縮版があった。
俺はゴーレムに今日から濃縮ポーションを作るように命令して、その日はセレーネの言う通り安静にした。




