なぜか一緒のベッドにいるエルフさん
「んあ……」
目を開けると、自分の部屋の天井が目に入った。
そうだ、俺は天狐との戦いが終わって帰ってきたあと、疲れてたからすぐに寝てしまったんだったな……。
それにしても、さっきから左半身に感じる、とても柔らかい感触はなんだろう。それに、なんだか甘いいい匂いもする。
重いまぶたを薄く開けながら、ベッドに手をついて立ち上がろうとしたとき。
むにゅ、と手に柔らかくも反発する、ちょうどいい感触が伝わってきた。
「なんだこれ……?」
俺が不思議に思って目を開けると……。
「…………は?」
俺の真横に、セレーネがいた。
目を閉じて寝息を立てている。
長い金のまつ毛に、小ぶりな鼻、そして桜色の唇。
その女神と見まごうほどの神秘的な美が目の前にある。
しかも、それだけでなくどうやらセレーネは俺に抱きついているらしい。左半身に感じる柔らかさはセレーネが抱きついてきていたもので、俺の左腕に押し付けられた胸がすごい形になっている。しかもセレーネの寝るときの格好はネグリジェのような薄い服なので、感触もダイレクトに伝わってくる。
じゃあ、俺が今左手で掴んでいるのは……。
俺は視線をゆっくりと下げる。
「なっ、えっ、ちょっ」
俺の左手がセレーネの臀部を鷲掴みにしているのを見て、俺は慌てて手を離した。
するとセレーナはその動きで目が覚めたのか、「ん……」と声を上げてゆっくり目を開けた。
「……ああ、おはようございます」
セレーネは目をこすりながら俺に朝の挨拶をしてくる。
「な、なんでセレーネがここに……?」
「覚えてないんですか? 昨日のこと」
「えっ」
「家に帰ってくるなりあなたが「眠くなった」と言って、電池が切れたみたいにもたれかかってきたので、ベッドに寝かせて、傷跡の治療をしたんです」
「なんだ、そういうことか……」
一瞬セレーネの言葉にドキッとしたものの、俺は安堵の息を吐く。
「いやまて、じゃあなんでセレーネが一緒のベッドに居るんだよ」
「夜中にトイレに行ったときに寝ぼけてしまって」
「いや、俺とセレーネの部屋の位置反対なんだけど」
トイレは廊下の真ん中にあり、俺とセレーネの部屋の位置はそれぞれ正反対に位置している。
寝ぼけてても普通は間違えないと思うのだが……。
「寝ぼけて間違えました」
「いや、寝ぼけててもそもそもベッドに入るときに俺がいるから普通気づく……」
「寝ぼけて、間違えました」
「そっ、か……」
強烈な目力と共に断言されたので、俺にはそう返すしかなかった。
セレーネがベッドから起き上がる。
「怪我の加減はどうですか」
「え、ああ……てか俺上半身裸じゃん」
そこで俺は上半身に何も着ていなかったことに気がついた。
昨日天狐に斬られ、通常の回復ポーションでは回復しきれなかった上半身の切り傷は、まるで時が遡ったかのように消えていた。
「治療するときに邪魔なので脱がしました。ふむ、ちゃんと傷は癒えているようですね」
ペタ、ペタ、とセレーネが俺の胸板や腹を撫でてくる。
「あ、あの……セレーネさん?」
「なんですか」
「その、くすぐったいんですが……」
「治療行為の一環です。我慢してください」
「……はい」
治療行為と言われ、俺は我慢するしかなかった。
セレーネは引き続き触ってくる。
しかし手つきがなんというか、ねちっこい。本当に治療行為なんですかこれは?
しばらくするとセレーネは満足したのか、俺から手を離した。
「起き上がっても大丈夫ですよ」
「ああ、ありがとうセレーネ。おかげで今日もダンジョンに……」
「何言ってるんですか。今日は少なくとも半日は安静にしていてください」
「ええ……」
「不満そうですが、あくまでも私の魔法は傷をきれいに消しただけで、完全に傷は塞がってないんです。エルフの魔法はそう簡単には使えないんですから、また無茶して傷が開いても治せませんからね」
「……はい」
セレーネから禁止されてしまったので、俺は渋々ダンジョンに潜るのは諦めることにした。
それから俺とセレーネは朝食を食べた。
朝食を食べ終わると、家に荷物が届いたので確認してみると、天狐からの荷物だった。
箱の中には昨日斬られた服の新品や回復ポーションと魔力ポーションが入っていた。
箱の隅の方に、なにやら高級そうな装飾の箱があったので開けてみると、ハイポーションが収められていた。
天狐の直筆と思わしき『昨日はありがとうございました』というメッセージと、狐のイラストが添えられたメッセージカードまでついている徹底ぶりだ。
……しかし、どうやって俺の住所を知ったのかは謎だった。
そして天狐からの荷物を確認し終えると、暇だったので俺はベッドで寝転がりながらいろいろとステータスを確認していたが、ふと思い至ってユニークスキルの『ガチャ』を使ってみた。
前回引いたとき、いつものようなゴミアイテムではなく、普通の剣が出てきたのが気になったのだ。
もしかしたら、もう一度引いたらいいアイテムが出るかもしれない。
別に強く期待していたわけでは無いが、そう淡い期待を抱いてガチャを発動する。
「ん? なんだこれ」
空中に魔法陣が現れるのはいつもの光景だが、一つだけいつもと違うものがあった。
「当たり……?」
魔法陣の上にはウインドウが付いており、そこには『当たり確定まで99/100』と書かれてあった。
「文面から察するに、つまりはソシャゲでよくあるような天井ってことか……?」
ソシャゲ、スマホのゲームにはゲーム内でのガチャ交換券、いわゆる石を使って、ランダムなアイテムや武器を手に入れる事ができる。
そしてそういうガチャには大抵、「ここまでガチャを回せば確実にレアアイテムが当たるよ」という、通称天井と呼ばれるカウンターが設置してある。
おそらく、このウインドウに書かれている『当たり確定まで99/100』という文章も、同じくガチャの天井を指しているのだろう。
「じゃあ、あと99回ガチャを回せばいいアイテムが手に入るってことか……!」
俺はちょっと興奮してベッドから起きあがる。
こうしてはいられない。
俺は早速ガチャを引いていく。
「……うん、知ってたけど」
一回目。出てきたのは雑草だった。
「いや、まだ最初だから……」
二回目、ビー玉が出てきた。
「……雑草よりはマシかもしれないけどさ」
それにしても、もうちょっといいアイテムが出て欲しい。
俺はそれから天井目前まで、魔力ポーションをがぶ飲みしながらガチャを引いた。
ガチャから出たアイテムはほとんどゴミだったが、それでも大体十回に一回は使い道のあるアイテムが出た。
回復ポーションに至っては二個も出たので、前よりは俺の運も改善されているのかもしれない。
運命から外れた状態で運とかあるのかわからないが。
「さて、どんなアイテムが出るかな……俺的には遠距離で戦える武器がほしいんだが」
昨日の天狐との戦いで遠距離攻撃できる武器がなかったことを思い出しながら、ラストの一回を引いた。
魔法陣が今まで出ひときわ明るく光り、俺は手に掴んだアイテムを取り出した。
「これは……リボルバー?」
俺の手に握られていたのは、どこかスチームパンクな装飾が施された回転式拳銃だった。
グリップの部分には宝石が嵌められており、光を放っている。
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《O‐PARTS:マナ・リボルバー》
ランク:A
魔力を5消費して弾丸を生成する事ができる。装弾数6発
弾丸の種類は以下の通りである。
・通常弾:魔力を使い弾を放つ。威力、速度は通常の拳銃と同程度となる。
・破壊弾:通常弾をすべて使い弾を放つ。威力が高い代わりに状態異常は付与できない。
・徹甲弾:通常弾を三発使い、装甲を貫く弾を放つ。
魔法と科学文明が融合した世界で作られた、魔力を弾丸にして発射する回転式拳銃。もちろん通常の弾丸も撃つことができる。
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ガチャから出てきた武器は、まさしく俺が欲しいものだった。




