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第63話 転移者狩り

「やっぱり強いねーすごいねーキミ」


「だからこの鎧がね」


 つっかかってきた守護兵団のタナカとかいう転移者の兵士を返り討ちにした俺は、気絶したタナカを担いで守護兵団の拠点を目指す。


「それにしてもよかったのか? リサさんは守護兵団に保護を求めに来たんだろ?」


「うーん。守護兵団よりもキミの方が頼りになるかも……? 」


 いやいやいやいや。犯罪者予備軍フィーナ、天然モニカ、生意気エミリーの相手だけでも手一杯なんだけど。


 いくらリサが転移者の常識人枠だとしても、彼女の「豊穣」スキルが戦闘面で役に立つとは思えない。いくらでも湧いてくる食べ物は便利だけども。


 悪いけど当初の目的通り守護兵団に保護してもらうのが無難かなあ。


「冗談冗談! キミたちの仕事を邪魔するわけにもいかないしね!」


 その割には目がマジっぽかったけど……。




「ああ。ここかあ」


 表に「守護兵団中央司令部」と看板が掲げられた石造りの大きな建物が目に入る。


「あのー、すみませーん」


「げえっまたタナカかよ! 悪いなあ、鎧の人」


「喧嘩する相手くらい選べよ、マジで」


 なんだこの空気。最悪拘置所なんかにぶち込まれる覚悟をしてきたんだけど。


 このタナカという転移者の兵士の日々の行いが災いしたのか、俺は事情を聞かれることもなくタナカ側が悪いことになった。


「スキルのおかげでスピードだけは一丁前なんだが。いかんせん頭の方が追いつかなくってな。おい、その辺に寝かせとけ」


 指示を飛ばしたのはオリバーと名乗った金髪の青年。守護兵団の第一大隊の隊長だとかでタナカの上司らしい。


「悪かったな。どうせこいつの方から突っかかってきたんだろう。こいつに代わって謝罪しよう」


「いや、俺の方も喧嘩腰だったのは事実なんだけど……」


「だとしてもだ。俺たちは『守護兵団』だ。所かまわず喧嘩を売るのが仕事じゃない」


 なんだか話の通じる人みたいだ。転移者失踪について聞いてみてもいいかもしれない。


「じゃあ詫びと言っちゃあなんだけど、この人を保護してもらえないか。名前はリサさんで転移者。近頃の転移者失踪事件の話を聞いて山から降りてきたんだ」


 するとオリバーの表情が途端に曇る。やべっ。この話題は地雷っぽい。


 まあよく考えたら当然かも。転移者が出自を隠さずいられるのをウリにしてる国で転移者が次々失踪してるってのは大問題だもんなあ。


「今はダキスタリアよりも山の中の方が安全かも知れないが。身柄は責任を持って保護しよう。彼女の滞在中は守護兵団で働いてもらってもらうことになるが……いいのか?」


「まあ……しょうがないかあ。タダで衣食住を保証してもらうってわけにもいかないしね」


「いきなりパトロールのような勤務はないから安心してくれ。所持スキルにもよるが、始めは後方支援を頼みたい」


 どうやらリサとオリバーの間で話がまとまった様子。リサとはここでさよならかあ。短い間だったけど寂しいものがあるな。


「報告! 報告!」


 俺たちが守護兵団の拠点を後にしようとすると突然息を切らした兵士が駆け込んできた。


 うーんこの厄介事の予感。


「何事だ?」


「パトロールに当たっていた第一大隊の分隊一つが消失しました!」


「何だと!? 転移者で編成した分隊であれば謎の襲撃者に対処できると踏んだが……悪手だったな……!」


 今ちょうど事件が起きたってことか。消えちゃった人がどこへ行ったのか、どう連れ戻すのか手がかりを得られるかもしれない。


 無事このエリーゼの依頼を解決して今度こそ借金から解放されるぞ!


「なあ。俺たちにできることがあれば……」


「ゼドル次第でお手伝いいたしまっす!」


「お前は黙っとれい」


 話の腰をへし折りにかかるフィーナを抑え、俺が話を続ける。


「言ってなかったけど俺も転移者だ。囮にもなるし、どこかに飛ばされたら内部から脱出してみせるさ」


「非転移者の部隊を編成しろ! 分隊が消失した現場に向かう! それとこの一件は興味本位で首を突っ込むようなものではないが、四の五の言っていられる状況ではない。君たちにも助力願おう!」


 せわしなく部下を指揮するオリバーに同行する許可を得ることに成功。慌ただしく守護兵団の拠点を出発する。




「一応聞いておくが、君たちは冒険者か?」


「まあ、それなりには」


 移動しながらオリバーが俺たちに探りを入れてくる。まあ当然か。


 行商という体で入国した以上特Aランクであることを明かすのもなあ。言葉を濁す俺。


「聞いて驚かないでよ! わたしたち特A! ランクの冒険者なんだから! 特A! よ!」


 想定外のところから正体を明かされた。


 こういうときに失言するのって大抵フィーナだったからエミリーに気を配っていなかったなあ。


 そうだよねえ。自慢したかったねえ。確か亡くなったお父さんが特Aランク冒険者だったんだっけ。


「何言ってるんですかエミリー! 私たちはしがない行商人。トクエイ? なんのことですかねえ」


「そ、そうですよ。特……特売品を売りにきたんですう」


 うーん。流石に無理があるフィーナとモニカのフォロー。


「特にこの鎧の人は強いんだよ! 村に来た盗賊十人を素手で叩きのめしちゃうんだから!」


 リサまで付いてきてるし。もう知らなーい。


「……行商という形で入国しましたが俺たちは確かに特Aランク冒険者パーティです。ワケあって転移者失踪について調べにきたんです」


「特Aランクとなると既存のランクの枠では計り知れない秀でた一芸を持っているか、為政者に特別に任命された二つのパターンがあるが、君たちはどうやら後者のようだな」


 バレちゃった。ダキスタリアの上層部に報告されるかなあ。国際問題とかにはならないでね。


「俺は使えるものは使う主義でね。上に報告してしまえば君たちの処遇がどうなるかわからない。事件の黒幕の尻尾を掴むまで我々に協力してもらおうか」


 つまりは守護兵団公認で捜査に参加できるということか。


 結果的にエミリーのおかげ……なのか?


 どこか釈然としない気持ちでいると分隊が消失したという現場にたどり着く。


 兵士たちによって現場は保全されており、彼らがこの現象を「消失」と呼ぶ理由が理解できた。


 兵士たちの兜や鎧、武器などの装備がその場に散らばり肝心の持ち主がどこにもいないからだ。


 現場に到着してしばらくすると、突然現場全体を覆う煙幕が張られた。咄嗟に視覚を強化するが魔力的な妨害を含んだ粒子のようで周囲が見渡せない。


「ふぇふぇ。また転移者が来たねえ」


「総員抜刀を許可する! 周囲に気を配れ!」


 謎の人物の声。オリバーの指示が響く。


 そして煙幕が晴れたとき、俺は薄暗い牢獄の中にいた。

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