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第54話 オペレーション・メテオブレイク

 異次元の魔術士クラウス。彼の自動迎撃術式の放つ無数の斬撃を切り払いながら俺は突進する。頭上にはクラウスの召喚した隕石。


(こいつを倒さないとグルースレーごと滅びる。今必死になって戦っているみんなだって死ぬんだ!)


 敵の自動迎撃に対抗してこちらもEX狩刃(エクスカリバー)の自動迎撃の力を借りるが、あと一メートルほどの距離で前に進めなくなる。単純にクラウスの術式の手数がこちらの攻撃を上回っているのだ。


 俺は左側から、ガストンは右側から攻め立てるが【大隕石】(メテオフォール)の発動の妨害をするまでには至らない。


(残り時間はどれくらいあるんだ!? きっと魔力切れが狙えるような相手じゃない! 必ず仕留めないと!)


「私も参りましょう。剣は嗜む程度ですのでご期待に添えないかもしれませんが~」


 ヨハンナも仕込み杖から剣を抜刀し、クラウスに斬りかかる。


「これは素晴らしいなあ。Aランク上位相当の戦士。総合力で言えばきっと私よりも優れた多彩な魔術士。発展途上だが見所のある剣士。相手にとって不足はないね」


「それにしては随分余裕そうだがなあ!」


 全身に切り傷を負いながら三人の中で一番深くクラウスの懐に入り込んでいるガストンがそう叫ぶと、両手に一本ずつ持った大斧の片方をクラウスに投げ付けた。


 自動迎撃の無数の斬撃によって破壊される斧。だがバラバラになった大斧の破片に術式が反応し、さらにその破片を粉々にする。


 そして術式が機械的に斧の破片を狙っている隙にガストンはさらに前進する。それでも回避しきれない斬撃をその身に受けながら渾身の一撃をクラウスに叩き込もうとした。


「よく考えたなあ。術式の調整が必要かもしれないね」


 脳天目がけて斧が振り下ろされようとしているのにクラウスは涼しい顔だ。


 そして倒れたのはガストンの方だった。俺も前進しようと必死だったから詳しくは見えなかった。ただ見えたのはクラウスが腰の剣を抜いた瞬間ガストンの胸が深々と斬られたということ。


「自動迎撃術式をその高みまで研鑽しながら剣術まで修めているのですか? あなたこそ随分多彩なのですね」


 ヨハンナの口調に余裕がない。「剣豪」クラスの実力をもってしてもその剣はクラウスには届かない。


「ああ。これも自動迎撃の応用だよ。私が認識した敵に抜刀すると術式が最適な一撃を割り出し最速で打ち込む。そういう仕組みなんだ」


 倒れたガストンへの斬撃がなくなった分俺とヨハンナへの攻撃の勢いが増す。


EX狩刃(エクスカリバー)! 俺が攻める! 防御に専念してくれ!」


 右手にEX狩刃(エクスカリバー)。左手に毒液から生成した短剣を手にし、三本連続で投擲する。


 クラウスは毒の短剣の本質を一目見て気付いたらしく、自動迎撃による反撃を止め防壁を張り受け止める。斬撃による反撃を受けたら即座に短剣の実体化を解き毒液を浴びせてやるつもりだったが、そう簡単にはいかないらしい。


 だがほんの一瞬だったが術式が止まった。鎧の出力を上げ一気に踏み込む。クラウスの剣の間合いに入り込むことに成功した。ここからだ!


 クラウスの右手に握られた剣が自動迎撃により反射的に狙うのは、武器を持たない俺の左半身だと確信していた。案の定、俺の左肩から袈裟斬りにするように敵の剣が自動で動く。


 即座に俺は左手に毒液の剣を生成し、その一撃を受け止める。クラウスの剣は毒の剣を弾き飛ばすが軌道が逸れ俺の身には届かない。


(奴の利き腕が伸びきった今がチャンスだ! EX狩刃(エクスカリバー)で仕留める!)


 だが俺は激しい衝撃と共に後方に吹き飛ばされた。


 勇者の鎧によって強化された五感により俺は全てを見ていた。だが反応できなかった。


 武器を持たずフリーだった左手の指から強力な魔弾が放たれ俺に直撃したのだ。


 俺はすぐに立ち上がりクラウスに接近を試みるが再び自動迎撃の斬撃に阻まれる。


 今最もクラウスの近くにいるのはヨハンナ。Aランクの魔術士であり「剣豪」である彼女を警戒したのか、クラウスは刃による迎撃の範囲に入る前に魔弾を数発打ちヨハンナの隙を作ろうとする。その全てをヨハンナは弾くが、その隙に術式の刃が彼女を斬りつける。


 だが突然無数に繰り出される斬撃が止んだ。俺とヨハンナから後ずさり距離を取るクラウス。ヨハンナの体内を巡る魔力を読み取り、数歩下がったのだ。魔力の流れは五感強化された俺にもわかった。


「かかりましたね~」


 笑みを浮かべるヨハンナ。クラウスは状況判断のために振り返るが、背後には何もない。


「うりゃあああああああ!」


 最早見慣れた木の棒がクラウスの右肩を強く打った。骨の砕ける音が響き渡る。


 衛兵隊長を務める猫、ポコによる渾身の一撃だった。


「悪者やっつける!」


 俺は上空を見上げる。クラウスの真上にワープホールが下向きに出現していた。


「私の認識の外からの攻撃ですか。やりますね。ワープホール出現に生じる魔力以上の魔力を身体に巡らせカモフラージュしたと。これでは自動迎撃は反応できない」


「あなたの負けです~。【大隕石】(メテオフォール)を解いてください」


 ポコが木の棒を構え、負傷したガストンも起き上がり斧を構える。


「それはどうかなあ。今術式を解除しても隕石が消えるわけじゃないんだ。それに私はまだ片腕をやられただけだしね。自動迎撃に回す魔力リソースをこれまで以上に増やせば君たちは私に近付くことすら叶わないよ」


 ポコの転移から思いついたことがあった。俺より強力な増援が来たんだ。この場を離れてでもやる価値はある!


(ヨハンナ。転移だ。俺をあの隕石のところに転移させろ!)


 まだヨハンナの念話が通じる可能性に賭け強く念じる。


(無茶です~。基本的にワープホールは予め指定したポイントか、縁ある者の元へ移動する際に使用するものです。目視で行使する術式じゃありませんよ~)


「いいから! やってくれ!」


 思わず声に出てしまう。ヨハンナは無言で頷くと俺の足元にワープホールを開く。


「どこに出ても知りませんから~!」


 同時にポコとガストンが前後からクラウスを攻め立てる。俺はそれを尻目にワープホールに飲み込まれていく。




「わあああああ!」


 俺は隕石のさらに上空に転移していた。空気が薄いが「健康体」スキルが無理やり呼吸を可能にさせる。


 手足をばたつかせ辛うじて位置を調節し隕石に落下する。EX狩刃(エクスカリバー)を突き立て墜落しないように楔とした。


「さあて。どんな毒をご所望だい?」


 俺のあまりにも無謀な案を気に入ったかのように上機嫌そうなEX狩刃(エクスカリバー)が出現する。


「物質そのものを破壊する猛毒だ。できるよなあ!?」


「おうさ! まっかせなあ!」


 EX狩刃(エクスカリバー)の毒液を凝縮して黒い刀身のEX狩刃・極エクスカリバー・エクストリームに変貌させる。そしてありったけの毒を流し込んだ。


 しばらくすると突然隕石が落下を始める。クラウスが俺の目論みに気付いたのか。


 だがもう遅い。この隕石の内部はグズグズだ。地上に衝突するまでにバラバラになるだろう。


 俺の予想通り隕石は空中分解して地上に落下していく。幸い城壁の上には無数の魔術士たちがいたはずだ。破片はあいつらに撃ち落としてもらおう。


 EX狩刃(エクスカリバー)を突き立てしがみ付いていた部分も崩れ、俺はある種の満足感に浸りながら自由落下を始めた。


「俺たちの勝ちだ! ざまあないぜ!」

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