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3/3

小人の抵抗

「だが、見えたぞ。雑すぎるな」


 圧倒的な魔力、身体能力は脅威だが、使い方が悪すぎる。冒険者は魔物を殺すための技を使うと言ったが、あいつの戦い方は魔物以下だ。技を持たず、魔法戦術の基本の牽制と本命の撃ち分けもできていない。


「なにが転生者だ? ただのトーシロだろ」


 残り30mまで近づいて、こちらも射程内に入る。盾を投げつけて彼から視界を奪い、本命の投げナイフが刺さる。

 彼は魔法陣を消して、剣技オンリーに切り替えた。無骨な鉄棍と華美な剣がぶつかり、闘技場に美しい金属音が響く。


「最初から炎球を撃てば勝てたんじゃないかい? 手加減のつもりか?」


 鍔迫り合いの最中に挑発してみたが、獣相手のとき程うまくいかなかった。ほとんどの人は奴隷に馬鹿にされたと思ってキレ散らかすが、こいつは自尊心が低いのか、それとも俺のことなど眼中にないのか、そのままの表情で俺の棍を受け流した。


「お前は師に信用されなかったんだな。魔法の有効な使い方を教わらなかったんだろ」


 この挑発は効いた。ツボの位置まで変なやつだ。さっきまでギリギリ技の形を保っていた彼の剣は、力任せになり、ガキの戦いゴッコのようだ。数分前には通らなかった頭狙いの棍棒が直撃し、棍棒を警戒されても、フェイントからハイキックや、投げ技が決まる。


 得意の挑発が刺さり、試合のペースを握ったと思ったが、違和感を感じた。なぜこいつは降参しないんだ? 冒険者なんて腕1本折ればビビって降りてくれると思っていたが、こいつは降りない。まだ逆転の種を用意しているのか?

 そんな疑問を持ちながら後ろ回し蹴りをしたとき、彼の周りに再び魔法陣が展開され、ほぼ同時に爆発魔法が発動した。俺はまた吹っ飛ばされ、全身に火傷を負った。今回は距離が開くことはなかった。向こうから追撃しにきてくれた。

 受け身をとり、棍棒を構え直したが、今度はこっちが翻弄されているようだ。彼は正確なコントロールで剣を投げつけ、空いた右手で拳をつくり、それに大量の魔力を流していた。剣は咄嗟に躱すことができたが、本命の拳には対応できなかった。


「ガハッ……ハァ……ハァ……ぺっ」


 致死量の数倍の魔力が内臓にまわり、大量に吐血する。魔力を受けすぎたせいだろうか、流れる血はインクのように黒くなり、さらに口だけでなく、耳や目からも血が止まらない。足に力が入らなくなり、その場に座りこんだ。



「降参してくださいよ」


 転生者は静かに、でも聞き取りやすい声でそう言った

 

「ハハハ……できねえなぁ……そりゃ」

 

 それでも彼は諦めない。腰を屈めて、俺に手を差し伸べる。


「できねえって言ってんだろう……負けたら処刑台行きなんだよ。どうせ死ぬならここで殺してくれ」


 目の前の手を払い除け、遠くに落ちている剣を指差す。


「あれ……お前の剣だろう? ……あれで斬ってくれ、あんなに鋭い剣は見たことがない。……あれなら即死できそうだ」


「…………分かりました」


 彼は小走りで剣を拾いにいった。そうだ、それでいい。早く、俺の意識がなくなる前に。


「本当に降参しないんですね?」


「そう、降参しない」


 

 彼は確認をとってから剣を振り下ろした。



 その1秒にも満たない一瞬が、スローモーションになり、6分くらいに感じた。



 動け、動けよ俺の足。


 踏み出すというよりも、前に倒れるような進み方だが、彼の懐に入り、剣を避けることに成功した。


「悪いねえ……兄ちゃん、こういう戦い方しか……出来ねえんだよっ!」

 


 東方の戦士より伝えられた技、無刀取り。剣の根本を掴み、相手の動きを封じる。本来ならこのまま投げか、関節技に繋げるのだが、そんなチンタラやってたら先に俺の意識が無くなってしまう。金的蹴りと肘打ちで怯んだ隙に、剣を奪い、そのまま彼の胸に突き刺した。

 

「あばよ……トーシロの兄ちゃん」


 しかし、彼は倒れなかった。組み付き、俺の耳元で止めの魔法を唱えてから、意識を失った。


 氷柱が俺の胸を貫通し、相打ちになった


 

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