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幕府の御家人
足元に突き刺さる槍を手に取った多門は、
「日ノ本の槍だが、どこから飛んできた?」
飛んできた方向を見ると、ひとりの騎馬武者が、敵に囲まれていた。
「卑怯なり!我は、竹崎 季長である。正々堂々勝負いたせ。」
その光景を見て、多門はため息をついた。
「ありゃ幕府の御家人だな。」
軽薄そうな男こと、大蔵績永が声を掛ける。
「ああ、確か少弐景資殿の陣に寡兵で参陣していたのを見たな。」
多門も記憶を辿る。
「確か先駆けとして行ったはずだが追いついてしまったのか?」
その言葉に、績永は、
「逆だ、追い抜かれたんだ。ワシ等が菊池殿と赤坂で戦っていた時に、ほぼ首がないと分かったから先駆けて、攻め入ったのだ。 ほっておけばいいだろう。」
そういわれたが、多門はほっておくことができず敵に向けて駆け出した。