異世界転移してしまったが、どうすればいいんだ
その男の名は、淳一。
淳一は俗に言う「ニート」だ。だが、完全なニートではない。
一応動画投稿サイトに動画を投稿して生計を立てている。この男は動画投稿サイトでかなり稼いでいる。だが、この男のそんな優雅がいつまでも続くわけではない。
いつかはどんな配信者も廃れていく。今までにも廃れていった実況者や、配信者は沢山いる。
淳一もその一途を辿っている人間の一人だ。
今日も淳一はネットの掲示板で自分の評価を見ている。
「淳一チャンネル?あんなの、名前もダサいし、動画もゴミだろ。見る価値ない」
それへの返信では、
「そんな事ないよ!今も面白いし、名前もダサくはないと思うよ!」
という、コメントなどがみられ、喧嘩が起きていた。
淳一は、それを見て、
「またかよ….しょうもねぇな….もういいんだよ。ああ、そうだよ、俺は廃れたゴミ配信者だよ!」
今日は彼も一人でグチグチ言いながら動画編集を続ける。
もちろん、彼もこんな生活がずっと続くわけではない事も知ってるだろう。
「はぁ..俺どうするんだ。これから」
やはり彼も自分自身のこれからについては考えているようだ。
彼は、動画投稿サイト以外にも色々なSNSをやっている。例えば、クイッターだ。これは、自分の思ったことや、見たことなどを世界中の人が自由に投稿できるサイト。淳一ももちろんそのサイトでアカウントを持っている。
彼は「未来人」という名前で、自分がテキトーに考えた「未来」をクイートするという、しょうもない事をしている。
今日も彼は、
「二○二○年 七月十日、東京の渋谷にあるスクランブル交差点が、爆破される」
とかいう、とても不吉なクイートを残し、また動画編集を始めた。
「はぁ、つまんね….」
そんな事を言っているその時だった。
突然遠くから、
ドゴォォオォォォォオォン!!
という、爆発音と共に、とても大きな揺れが来た。彼は、何かが起きると、すぐニュースを見てしまう癖があり、その時もまたテレビをつけてニュースを見た。
これは、何故かかなり真面目な癖だ。
「ただいま、渋谷のスクランブル交差点で、とても大きな爆発がありました。今、スタッフや、取材が向かっているところですが、まだ間に合っていないようなので、別のニュースです・・・」
「えっ….なんだって!?今なんて言った!?このニュース番組!!」
「ええ、ただいま取材スタッフが到着した模様。渋谷にいた全ての人が亡くなった模様。とても大きな爆発とともに、とても強い爆風があったため、周りは原型をとどめていません。この事件は、何かの機械などの誤作動によるものと見られます。今のところは犯行の跡や、犯行の様子などの目撃情報は無いとのことです。これどういう事なんですかね。関さん・・・」
「え?え?どういう事だよ。俺がさっきクイートした事と全く同じ出来事じゃねえかよ….どうなってんだ」
淳一は明らかに同様している。まぁ、無理は無い。自分が呟いたテキトーな事が本当になってしまったのだから。
しかし、彼は今日のこの日に他の事件を詰め込んだ事を忘れていた。
「北海道で、一家連続殺人事件」
「熱中症で、異常な人数が死亡」
「沖縄の首里城が、突然跡形もなくなってしまう」
どうしたものか。彼は不吉な事件しか考えられないらしい。
「次のニュースです。北海道で、一家連続殺人事件が起きていたことが判明しました」
「速報です。今、この時期はとても暑いですが、今年は異常な人数の死亡が確認されているとの報告があります」
「また、速報が入りましたね。沖縄の首里城が、突然跡形も無く消え去るという事件が発生しました。ちょっと、これ関さん今日なんかおかしくないですか?こんなに事件が起こるなんて….しかもこんなの全部ただ事じゃないですよ?」
「えぇ、これは明らかにおかしいですね。同じ時間帯にここまでたくさんの大きな事件が発生するというのは・・・」
「待て待て待て。俺は悪くない。俺は悪くない。」
そういうと、彼は一旦テレビを消した。
「は..はは....ははははは….俺は何も悪くないぜ?たっ..多分見間違えだろ。そんな事起きるはずはない」
彼は唾を飲み込んで、決死の覚悟でテレビをつけた。
「・・・またまた速報です。容疑者が特定できた、との事です!容疑者は……東京都在住の寺島淳一との事です。今は一番近い警察署から、寺島淳一容疑者の特定をし、家に入って家宅捜査をするとの事です。でも、これおかしくないですか?全ての事件がこの容疑者一人なんて、こんな短時間で行ける距離じゃないですよ?北海道と東京と沖縄なんて・・・」
「そっ、そうだろ!お、俺じゃないんだよ。俺はただクイートしただけなんだ。本当にこんな事が起きるなんて考えてもみなかった!どうするんだ!俺….」
彼は相当焦っている。もうどうすればいいのかわからないようだ。
「あ!そうだ。これ、クイートで呟いた本当の事が起きるんなら、自分が逃げる方法をクイートすればいいんじゃないのか!?どうする!?どうやって逃げる!?俺!!」
彼は逃げる方法を考え出した。もうクイッターの「未来人」という設定は忘れているようだ。
ただ自分が逃げることにしか意識がない。
「異世界に転移する!」
「これ、さすがに通らねえか...?お願いだッ!神様ぁ!!」
まずい彼は少々夢見がちなバカだ。異世界に転移できるはずなんて….んっ!?
シュゥウウゥウウウゥゥゥウゥウゥゥン!
突然彼をとても明るい光が包み出した。彼はその瞬間、この地球、いや、この世界自体から消されて、別の世界に飛んだ。つまり元の世界では、彼の存在はなかったことになっている。つまり彼が起こした事件も全てなかったことになっているのだ。
それはそうと、彼は異世界に転送された。まさか、異世界があるとは思いもしなかった。
「えぇ!?俺マジで来たの!?異世界にぃ!?」
彼はさっきよりも動揺している。無理はない。この私でも動揺しているのだから。
それより、まずい。彼は動揺しすぎて、今にも気絶しそうだ。だが、なんとか意識は保っている。
「ま….まて….俺..まず宿屋か何か見つけ….ないと…………」
ふむ、彼のあの対応力には感心する。俺だったらまだそんな事言えないだろう。動揺しすぎて。
彼はふらふらと歩き始めた。彼が転移した場所はどうやら異世界にあるただの川の上に架かっている橋らしい。
田舎なのか、人気が全くない
彼はそこにポツリとあった小さな小屋に入った。
「誰か….さっきよりはまだマシになったが、まだ心臓の鼓動が止まらないな..。待て待て、まず、この状況を把握しよう。俺は今異世界にいる。そして、その『異世界』のとある川の橋の上にいた。そして今はその『異世界のとある川の橋の上』から、この小屋の中に来た....という事か!?」
おいおいおい。ちょっと待て。今、俺は彼(淳一)を客観的に見ている。だが、よくわからないことに、彼と意識が融合し始めてきている。さっぱり意味がわからないかもしれないが、だんだんと『俺』の意識が遠のいていく・・・。まずい。これは淳一と意識が融合されている最中なのか....!?
・・・・・
「っと、とりあえず、これで、今の状況の把握ができたな」
俺はとりあえず状況の把握をした。
「ここから、俺の冒険が始まっていくのか!どんな出会い、物語が俺を待っているんだろう!!」
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