対峙する原因
「最初に、俺が死ぬ事で世界を渡るのは確実です。」
彼女は当たり前だと言わんばかりに頷く。
「何故そうなのかは分かりません......ただ、死ぬ直前『アイツ』が現れるんです。」
「誰なの?」
「分かりません......黒いフードを被った男、『アイツ』の存在がこの現象に関わっているはずなんです。」
「つまり、その男を見付ける事が最優先だと......。」
「はい......成果と言われれば、それだけですが、でも。」
「ムリね。」
俺の話しを遮り、否定した。
「何処の誰かも分からない人間を探し出すなんて。」
「でも、探しだせれば!」
「非合理的すぎる。」
確かに、そう言われてしまえば、そうなんだが......。
「やっぱり......貴方には死んでもらう。」
夜の大学、構内の長い廊下を走る。
突き当たりの階段を駆け上がり、必死に逃げる。
階段の踊り場、置かれた空き缶を蹴り飛ばした。
静寂の構内に空き缶の音がこだました。
屋上の扉を開け、逃げ場を探すが道は塞がれた。
ハイヒールの音が階段を上がる。
扉を見据えると、彼女が屋上へやって来た。
「ここまでね。」
「ま、待って!そんな事しても!!」
「これだけなのよ......これしか、ないの。」
彼女の手に握られた拳銃は、俺を撃ち抜く。
崩れ落ちた俺の目に、『アイツ』が見えた。
「本当に居たのね、黒フードの男。」
「......美咲多江子......。」
「私を知っている......。」
「当然だ、あんたは『特異点』だからな。」
「どういう意味かしら?」
「......りょーすけ、ヒントをやるよ。」
「死んでないのは分かってる......。」
俺は起き上がり『アイツ』と初めて対峙した。
全ては計画だった。
死ぬ直前にしか現れないのならと、美咲さんの計画。
「演技力が無さすぎる、俳優のお前も居たのにな。」
「誰なんだお前?なんで俺なんだ!?」
「......その女だ。」
俺は美咲さんを見るが、彼女にも理解出来ない。
「次、行くぞ。」
『アイツ』はそう言うと、取り出した銃で俺を撃った。
「......美咲多江子、あんたはホント面白い。」
叫び声......?
乾いた破裂音が聴こえる。
身体中が痛い、全身を打ち付けた様に。
立ち上がり、辺りを見回し驚愕する。
崩れ落ちたビル、瓦礫だらけの街、転がる死体。
「......なんだよこれ......。」
渡った場所は、荒廃した世界だった。




