疑いの矛先
飛び起きる。
悪い夢を見た時の子供の様に。
家具の配置が少し違っていたが、自分の部屋である事は分かった。
また......世界を渡った......。
「痛っ!!」
......頭痛だ。
「お兄ちゃん!!」
扉が勢いよく開くと、妹が入ってきた。
「......あき......。」
この世界では、あきは眠り続けていない。
安心したからか、涙が出そうになった。
「気持ち悪いんですけど。」
「うるせー、なんだよ?」
「お母さんが起こして来いって。」
「もう起きてるよ。」
あきは部屋を出ていこうとしたが、立ち止まり振り返る。
「あのさ、たまにはめぐ姉のとこ行きなよ。」
そういえば、病院の帰りに別れたっきりだったのを思い出した。
「後で行くよ。」
「じゃ、アタシ学校行くね。」
並行世界の移動、分かった事がある。
俺が死ぬ事によって、発動するのは間違いない。
そして『アイツ』黒フードの男、奴が関係している。
一体何者で、どんな目的があるのか?
探し出さなければいけない。
そして......美咲多江子。
顔色ひとつ変えず、俺を殺した女。
結局この現象の頼りは彼女だけで、会うのは必然で......。
「気が重い......。」
会いたくない、そう言えばそうだ。
自分を殺した相手の顔なんか見たくもなかった。
重い足取りはとりあえずと言う名目で、めぐの家に向かった。
チャイムを鳴らすと、おばさんが出てきた。
「りょーくん、久し振りね。」
「お久し振りです。」
「さぁ、上がって、上がって。」
おばさんは何時も明るくて、やさしくて。
俺にとってはもう1人の母親の様で......。
通された和室、目の前の仏壇、めぐの写真。
この世界では......めぐが死んでいた。
話しの流れはこうだ。
合格発表、熱でダウン、あきとめぐが二人で行ったらしい。
その帰り、轢かれそうになったあきを庇い......。
躊躇ってなんていられない。
多分、全部、俺の責任なんだ。
終わらせないと駄目なんだ。
深呼吸をして自分が死んだ部屋をノックする。
「失礼します。」
彼女は居た、あの目でまた俺を見ている。
「貴方は?」
前の世界で刺された時に聞いた事を伝える。
睨まれたが、座る様に促され事の顛末を話す。
「なるほどね、部屋に入った時の緊張はそういう事なの。」
彼女は笑う、違う人間だとしても嫌な気分だ。
「安心して、貴方を殺す事はない。」
話すのは2度目だが、底の見えない怖さが鳥肌を立たせる。
「で、成果は有ったのかしら?」
信用、そんなモノは後回しだ。
終わらせなきゃいけない、いや、終わらせる。




