痛みを伴う答え
誤魔化すべきなのか。
だけど、この人には通用しない......そんな気がする。
「......なんで......?」
「......こんな夜中に汗だくで訪ね、何を訊くかと思えば並行世界を教えて欲しいなんて......怪しすぎるのよ。」
動けない......。
「会話をしながら観察させてもらったけど、あの質問......並行世界の渡り方、あの時だけ言葉の語尾が上がったの、気付いてたかしら?」
言葉が出ない.....。
「行動や言動を統合すると、助けて下さい並行世界を渡ってしまいました......私には、そう聞こえた。」
「でも......信じられますか?」
彼女は少し考える。
「そうね......でも、そうなんでしょ。」
綺麗に微笑む彼女は、恐ろしくもあり。
実験台のモルモット、今の俺を表すのに最も適していた。
暫く考えたが、話す他ないと思い、打ち明けた。
屋上から飛び降り、ロックスターになって、ファンに刺され死んで。
妹が4年も眠り続ける世界に来た事、洗いざらいぶちまけた。
「......貴方にとって、此処は3つ目の世界。」
「世界が変わる度に誰かが犠牲になってるみたいで......。」
「その事は、追々考えましょう。」
俺にはそれが全てだったのに、一蹴された。
嫌な気持ちになったが、頼れる人は彼女だけだった。
彼女は唇を触りながら思考する。
沈黙が続き、やがて決意した目で俺を見る。
「どうやって、並行世界を渡るのか?それについては説が有りすぎるのよ......でも、ハッキリしてる事がひとつある。」
そう言うと立ち上がり、ハサミを手にする。
「貴方は死ぬ事で渡れる。」
なんとなく気付いていた。
死んで目が覚めると、別の世界に居る。
そんな事、分かってたけど......。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
ゆっくりと俺に近付くその目は、躊躇いなんかない。
「そんな事して!捕まりますよ!!」
「別の世界の私には関係ないわ。」
気付けば、壁に追い詰められていた。
ハサミは俺の腹へと、ゆっくり押し込まれていく。
「あ!痛ッ!」
「向こうの世界の私に伝えて、......って、よろしくね。」
腰から崩れ落ち、腹から大量に流れる血。
「あぁッッ!」
汲み上げ血を吹き出す、鉄の味が口に広がる。
「......そのままでも大量出血で死ぬわ......でも、折角の機会だし、確実にやりましょう。」
美咲多江子は何度も俺を刺す。
表情を変える事なく、何度も、何度も......。
まるで、この行為すら実験の様に。
意識が遠退く......。
眠ったままの妹を思い出す、あき。
最後の瞬間、黒いフードの『アイツ』を見た。




