天才の器
病院を離れ、めぐに詳しい経緯を聞いた。
俺のせいだった......。
4年前、大学の合格発表の日。
風邪をこじらせ熱を出した俺の代わりに、あきが大学へ。
ネットで確認すると言ったが、自分が行くと聞かなかったらしい。
俺は見事合格、それを報せようとした帰り......。
信号無視だった......。
「......俺のせいだ。」
「りょーちゃんのせいじゃないよ!私だって、あの時一緒に。」
「あぁぁぁぁぁぁ!」
泣き出した俺に、めぐは寄り添ってくれていた。
あきの事故の後、両親はケンカが絶えなくなり去年離婚。
幸せだ、平穏だと思った世界は、家族を代償にした結果なのか。
カラッポになっていく頭に残った言葉『並行世界』
俺は自分の置かれた状況を理解する為にも、知る必要があった。
もし、俺の考えがそうなら、俺は並行世界を渡ってる。
入り口のプレートに書かれた名前『美咲多江子』
部屋からは明かりが漏れていた。
何も考えず夜中に走ったが、彼女は居るのか?
扉をノックして中へ入る。
「失礼します。」
椅子に座り振り返った彼女が俺を見る。
「誰?」
何から説明すべきか、何を訊けばいいのか、考えていなかった。
「並行世界について、教えて下さい。」
「何かのバツゲーム?それとも、興味があるのは......。」
短いスカートから見える太腿が、艶かしく。
「ち、違います!純粋に、知りたいんです!」
美咲多江子は俺の目を見つめる。
吸い込まれそうで、意識が遠退く様な......。
「......いいわ。」
何故彼女が話を訊いてくれる気になったのか分からなかった。
「並行世界について、どれくらい知っているの?」
「映画や、小説ぐらいの知識ですけど、同じ様な世界が他にもあって、そこでは同じ様な人が暮らしている。」
「そうね、それが並行世界。」
「並行世界って、どうやって生まれるんですか?」
「例えば、今から私はコーヒーを飲む、もしくは飲まない。」
「たった、それだけ!?」
「あるいは、核兵器を作る、作らない......そういった歴史的に大きな決断が、新しい世界を作る......もしくは、その両方。」
彼女は話を続けた。
「どちらにせよ生まれた世界は、私達の数と言う概念を超越し、今現在も増長し続け、最早や論理のそれ為らざるモノ。」
「じゃあ、どうやったら並行世界を渡れますか。」
そう尋ねると、彼女は黙った......。
「あの、美咲さん?」
「助教授、名前で呼ばれる間柄かしら?」
「あ、すいません。」
「ところで......貴方、この世界は幾つ目?」
突然の問い、話しの脈略もなく確信をつく。
彼女は......一体......。




