偽りの平穏
死んだ......また、死んだ......。
いや、今度こそなのか。
「りょーちゃん!!」
俺の横には死んだはずのめぐが居て。
「また夜更かし?もう着くよ。」
俺は電車に揺られて。
俺が落ちた大学の前に......。
「私午前中は旧館だから、じゃあ、また後でね。」
「うっ!!」
頭痛がした。
理解なんか出来ない、でも二度目だ。
耐性の様なモノなのか、心音は速かったが平静を保てた。
分かるかぎりだが、俺は大学に合格していて来年には卒業。
携帯でのめぐとのやりとりを見る限り、付き合っているらしく。
ロックスターの様な人気者ではないが、平穏な暮らしで。
なにより、めぐが生きている。
それだけで、それだけで嬉しかった。
気になったのは、前は会った事もない人の名前を知っていたが
ここでは思い出すのに、時間がかかった。
とは言え、俺に起きている現象が何なのか分からないし。
それを誰かに話しても理解はされないと思うし。
平穏なこの世界で、生きようと思った。
学食でめぐと合流。
他愛もない話を楽しそうに喋るめぐを愛しく感じ。
ここに居られる事が、幸せに感じていた。
女の人が歩いている。
その人は特別何かをした訳でもなく、ただ歩いている。
妖艶というのか、女性の色香を具現化した様な。
「美咲多江子さん?」
めぐは俺の視線を見て、不機嫌に言う。
「え、あぁ......院生だっけ?」
「助教授でしょ、なんでもすっごく頭が良くて、アメリカの大学で研究していたらしいんだけど、今は何故かこの大学の助教授。」
「へ~。」
「あれだけ綺麗だから男子の人気も高いけど、りょーちゃんも。」
「いや、俺はそうじゃなくて。」
「ウソ、冗談だよ。」
「......研究って、何やってたんだろな。」
「確か、『並行世界』その分野では有名らしいよ。」
並行世界、頭の中で何かが音をたてた気がした。
「今日行くんでしょ?病院。」
「えっ?」
「あきちゃんのお見舞い。」
妹のあきは天真爛漫で兄妹の仲も良く。
引きこもる前までは、何時も一緒で。
元気だけが取り柄の様な奴で病気なんて縁のない、そう思ってた。
病室に居たあきは眠っている様で、呼吸器が繋がれて。
「あら、めぐちゃん、来てくれたの。」
「おばさん、こんにちは、あきちゃん。」
「......なんだよ、これ。」
母親は首を傾げたが、あきの頭を撫でながら言う。
「『4年も寝てる』んだもん、髪の毛切ってあげたのよ。」
平穏だと、幸せだと感じたこの世界で
妹のあきは、4年間眠り続けていた............。




