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渡航拒否


「あぁぁッ!!」


頭痛だ、渡るたびに起きたそれは酷くなる。


「はぁ、はぁ、はぁ......。」


「パパ!」


俺を呼ぶその小さな手は頭を優しく撫でる。


「どうしたの!?」


めぐ......。


「パパ、あたまいたいの!」


「頭痛?大丈夫なのりょーちゃん?」


心配そうに顔を覗き込む二人に、笑いが込み上げた。


「ふははははははは......こんな世界もあるんだ。」


「りょーちゃん?」


俺は二人の頭に手を置く。


「ごめん、大丈夫だよ。」




俺は結婚していて、子供がいて、大学は諦め就職。


若い分、苦労も絶えないのだろうが


写真にうつる三人は幸せそうで、嬉しかった。



もう渡りたくない。



そう思った......。


この世界で待ち受けるモノが何にせよ


渡る事への恐怖と、この幸せが俺をそう思わせた。



『アイツ』が頭をよぎる。


きっとこの世界でも何かを狙ってる。


『アイツ』がいる限り俺はまた飛ばされる、止めないと......。


「ごめん、ちょっと出掛ける。」


「あ、じゃあ帰りに玉ねぎ買ってきて。」


「......玉ねぎ?」


「今日はハンバーグだもんねー。」


「ねー。」


笑う二人を見て、絶対に渡らないと、必ず止めると決めた。





頼れる人は他にいない。


ノックをして部屋に入るが、そこに彼女はいなかった。


「どちら様?」


後ろに立っていたのは見た事のない男の人で。


「あ、すいません、美咲多江子さんは?」


「美咲多江子......?」


彼は少し考え、応える。


「いないよ、そんな人。」


「え!?でも、この部屋!」


「ここは僕の部屋だし、もう、5年は使ってるよ。」


慌てて外のプレートを確認するが、そこに彼女の名前はなかった。


「失礼しました。」


彼女はいない、少なくともこの場所には......。




所在が分からず、やみくもにパソコンで検索する。


「美咲......多江子......。」


ヒットした画面に彼女の写真と経歴がでる。


アメリカ生まれの帰国子女、幼少期から神童と呼ばれ


わずか15歳でハーバードに合格、その後、物理学の道へ


様々な分野での活躍も期待されていた。


粒子加速器の実験中、事故により死亡......享年27歳


「死亡!?」


この世界に彼女はいない......。




『アイツ』の言葉を思い出した。


ヒントは彼女......だとしたら、『アイツ』は。


この世界をすぐに終わらせる気だ。





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