新しい歯車
マンションの屋上で佇み過去を振り返る。
大した年数は生きていない。
だから、少し自己紹介をさせて下さい。
22年前、神奈川県横浜市で産まれました。
両親と高校生の妹、4人家族です。
育った所は昔ながらの漁師街、下町でした。
活発で家に居るよりも、外に居る様な子供。
友達も多く、中学で出来た初めての彼女は幼馴染でした。
高校は普通科、大小悩みはあったけど特別な事は何も。
大学受験に失敗し、志望校に落ちた。
狂い始めたのは、きっとこの頃からだ。
描いた人生設計にヒビが入ったんだ。
一浪して受かった大学は、志望校とは程遠く。
ただ少しでも早く追いつこうと、それだけで選んだ。
ヒビが濃くなるが分かった。
何の目的もなく入った大学は、居心地が悪く馴染めず。
何時しか大学へ行く回数が減り、引きこもりになった。
そこで......割れたんだ......。
一度でも狂った歯車は、他の歯車と交換するか、
もしくは歯車を廻す機械事、変えるしかない......。
なので、死にます。
「......って、誰に言ってんだろ......。」
覗き込んだ地上は暗く引き込まれそうで、
吹き荒ぶ風に背中を押され、思わず後退った。
「......くそ!くそ!くそーッ!!」
「あの時受かってたら!こんな事になんて!!」
奮い立たせる為大声を出し、足を進める。
「あぁ、そうだよ!!あの時一発で受かってたら!
友達とバンドなんか組んで!今頃、大スターなんだよ!!」
最後の一歩が出ない、諦めるか......。
そう思った時、突風が吹いた。
滑った、落ちるつもりだったのに足を滑らせ転落。
「うァァァァァァァァァァァァァ!!!」
地面にぶつかる瞬間、『アイツ』を見た。
黒いフードを目深に被り、顔は認識出来なかったが
そいつは......俺を見ていた。
死ぬ瞬間の......俺を............。
「......すけ」
誰かが呼んでる、天国か......?
「......うすけ」
また呼ばれた、助かったのか......?
「りょーすけ!!」
目を開けると見た事もない場所、見た事もない人
「本番前に居眠りかよ?」
思考が追いつかない......。
「本番です、どうぞ!」
強引に押し出された先に拡がる景色。
楽器を持った人達が俺を迎え入れ。
何万人もの歓声が、俺の名前を呼んだ......。




