一人の心。
そして、僕は幻を見た。
話がひと段落した頃、僕たちは闘技場に場所を移した。
アリスの属性を調べるために。
そして事はおこった。
彼女はお父様の話を聞いて一発で魔法を使いこなしてしまった。
しかも、とてつもない規模の莫大な魔力を駆使した魔法だった。
大きな鳥や雲。
降り注ぐ雨がすべて神秘的に映った。
その雫には回復能力が宿っていた。
6歳にして、治癒魔法と創成魔法の連携魔法。
治癒魔法は光の魔法しか使えないとされているのに_
僕は唖然としてその光景を見ていた。
そのとたん僕に劣等感が込み上げてきた。
なんの魔力もない僕と魔法の秀才アリスの格差に驚いたからだ。
気づくと僕は
「ぼ、僕。お庭行ってきますね!」
と口走っていた。
この光景が見ていられなかったから。
僕は屋敷を飛び出し大きな木の下でひたすら涙を流した。
悔しくてむなしくて。
アリスに嫉妬してしまう僕が情けなくて。
そんな時。
アリスの声が響いた。
「僕は出来損ないで、アリスにも負けているんだ。
侯爵家の息子として宮廷魔術師の息子として出来損ないなんだ。」
と吐いた言葉が聞こえていないか。その心配が僕の心を覆った。
「そんなことないっ!」