プロローグ
「遅刻するっ!」
私こと葉山夏海はトーストを咥える時間も無く、学校へと駆け出した。
正直学校なんて行きたくもないけれど。
今更不登校になるのもなんだか気に入らないし。
特に誰かにぶつかる訳でもなく、教室へと滑り込む。
途端。
あんなに五月蝿かった教室が静まり返り、小さな笑い声が聞こえてくる。
嗚呼、ムカつく。
けどまあわざわざほれに噛み付いても意味が無いことはとっくに理解しているから無視して、自分の席に着く。
すると今度は罵詈雑言が聞こえてくる。
そんな"いつも通りの日常"だった。
──はずだった。
「何してるの?」
聞こえてきたのは先生の声。
普段この時間には、聞こえるはずのない声。だって、いつも先生は
遅刻。遅い時だと朝のHRに間に合わないことすら。
時間がおかしいってのもあるけど。
私が驚いた理由はそれだけじゃない。
「せん…せい…?いつの間に…」
いつの間にか後ろにいることに。
まったく気づかなかった。
気配がない…と言ったら伝わるかな。
それに、ドアは男子達がふざけて塞いでいた。
皆が馬鹿みたいに口を開いて固まっている。
「んん?いじめ?」
そう先生は笑いながら言う。否、目はまったく笑ってなかった。
先生は私達よりも低く、顔も幼い作り。
曰く、たまに中学生にすら間違えられるとか。
そんな先生だから、特に怒っても怖くないと皆が噂するのもおかしくは無いだろう。
けれど、今日ばかりは違った。
トスン。
誰かが座り込む。
「答えないと先生わっかんないなぁ。」
いじめの中心に立つ浜野有咲の顔を覗き込み、先生はそう言う。
「いるよねぇ。
悪いことをしたくせに反省せずにしらばっくれる子。
先生そーいうのは嫌いだな。」
クイ。
座り込んだ有咲の顔を上へと上げると、先生は小さく微笑み、こう言った。
「お仕置き、しよっか♪」
『♪』が聞こえてきそうな声でそう言った途端。
急に強い眠気が襲いかかってくる。
なん…で?
思考する間もなく、気づけば目を閉じていた。




