部隊準備(表) 局長、出陣(意味深)……なお未遂
部隊、増えました。
まぁ虎徹たちしかいないときでも一週間で必要な魔導水晶は集まってたし、そこ林冲たちが加わったんだから、そら集まるわな。
で。
今回の精霊の名前のテーマはズバリ“戦闘機”だ!
ちょっとカタカナな名前も欲しいじゃん?
漢字だけだとバランス悪いじゃん?
と、いうわけで喚び出しました。
森人族、ラプター率いる空翼隊。
火人族、イーグル率いる空爪隊。
猫人族、ヴァルチャー率いる空角隊。
風人族、ファルケン率いる空牙隊。
頑張って考えたけど妖精の名前は思いつかなかったねぇ。
まさかミサイルの名前つけるのはどうかと思うし。
妖精にトマホークとかはちょっと……。
装備はショートソードにダガーナイフの二刀流にしてみた。
西洋風の武器と新撰組の格好、意外といい感じに思うのは……ゲームの影響だろうなぁ。
で、部隊はこれだけじゃない。
今回はもう一部隊召喚しちゃったZE☆
狐人族、零率いる岩本隊。
犬人族、天山率いる村田隊。
竜人族、彗星率いる江草隊。
兎人族、流星率いる友永隊。
ジャパニーズお空のサムライ集団。
名前の響きも強そうで、こちらもまたいい感じになったんじゃないかな。
装備は刀に短銃を合わせてみた。
戦闘機→機銃→短銃でいいやみたいな。
そのうち射撃武器をメインにした精霊も召喚してみたいところだな。
で、だ。
ふふふ。
4部隊もいるんだもの、そろそろ、イイよな?
ローテーション的にさぁ、ちょっとくらい寝不足でも大丈夫だべ?
いやいや、もちろんそれだけのために部隊を増やしたワケではありませんとも。
加護の力が俺に危険の予兆を知らせてくれた。
それはまだ具体的な気配は掴めていないが、そう遠くないうちに俺の身に危険が迫ってくるだろう。
反逆の加護が発動するような、俺一人では太刀打ちできないような大きな危険が。
◇◇◇
「局長、お茶でも如何ですか?」
和泉守がお茶を持って来てくれた。
転生前のジャンクな飲み物が恋しくなることもあるが、お茶も好きだったから意外と苦労はない。
そもそも、いうて炭酸とかあるし。
ソーダ水、ラムネ、ともに旨し!
「ん、ありがとう。……? どうした?」
湯呑を受け取って口を付けようとしたワケだが……和泉守さんや、ちょいと近くないかね?
「局長。戦力も随分と整いましたね?」
「まぁな。お前たちが頑張ってくれたおかげだな」
「ふふっ。局長の御為ですもの、何も問題ありません。それで局長、部隊も増えましたし、余裕、ありますよね? そう、色々と……」
甘えるような声でしな垂れかかってくる狐娘。
おっとっと? これは“そういう”流れですかね?
「確かに、時間には余裕があるかもな」
空気を読んで遠慮なく抱き寄せる。
化粧品じゃない、ほんのりの香る自然な……あー、なんだろうコレ、漫画とかでたまに見る香木? ってヤツなのかな。
普通にいい匂いだコレ。
「あら、いけませんよ局長。まだ日が高いのに……」
一応ダメだと言いつつも、身体はしっかり密着させてくる和泉守。
うん。
同意と見てよろしいですね?
◇◇◇
「御無沙汰しております中尉殿。ひと月としない合間でも、なんとも賑やかでありますなぁ」
「お久しぶりです吟堂少尉殿。相変わらず粋な装いですね」
「あっはっは! まぁ情報監理局の人間だ、あちこちに顔を出せねばならん以上、服装に手を抜くワケにもいかんのだ。しかし大概中尉殿も変わらんね。小官を相手に変わらず丁寧だ」
上品な白髪の老紳士、俺と同じ只人族―――前世でいう普通の人間なんだが―――の吟堂牧音少尉。
先ほどご本人が言っていたように情報局に勤める、裏方役の人だ。
世話になったし、単純に尊敬できるので昔からそれなりの態度を心掛けている。
本来なら俺の方が階級が上だから、言葉遣いもそれなりにしないといけないだけどね。
そうでなくても、同じ少尉官ですら精霊使いのほうが立場が強く、管理局の文官は軍内部でも特に弱い。
まぁそんなこたぁ俺には知ったこっちゃないけどね。
それにクソムカつく上官には反抗するぶん、こういう敬うべき大人には頭を下げないとバランスとれないし。
「さて、立ち話もなんですから。ちょうど区長から頂き物の羊羮があるんです」
「おお、それは良いタイミングで来てしまったようですなぁ! ……で、その、そちらの狐の御嬢さんは……」
「初対面なので警戒しているだけですよ。俺の安全を第一に考えてくれる、頼れる忠義者です」
睨み付けているワケではないが、その視線は非常に冷たく、ベテランの密偵である吟堂さんは何かを感付いたようだ。
まぁ言えないけどね。
これからイッパツ盛るところを邪魔されたので不機嫌ですとは言えないよね。
たぶん、吟堂さんは説明したとして笑ってくれるだろう。
俺が精霊としっぽりやってたの知ってるし。
ただ和泉守は間違いなく不機嫌になるだろう。
◇◇◇
「まったく、相変わらず監視対象団体のヤツばらが元気でね。桜国はともかく、奥州の方がキナ臭くて困る」
「魔獣の方ではなく、ですか」
「向こうはこの辺りほど切羽詰まってないからね。もちろん未だに侵入制限区域はあるが、まぁ対処可能な程度だよ」
ほんと、サラッと機密をぶちまけるねぇ。
監視対象団体とはその名の通り、何やらかすかワカラン危険な連中のことだ。
どれくらい危険かといえば、本来なら情報統制がなされて、兵務局なら少なくとも将帥級が扱う案件だ。
佐官級ですら情報へのアクセスは制限されてるし、俺のような尉官級は存在すら知らない可能性もある。
なんでそんなこと知ってるかって?
そりゃ幼年学校でやらかしたからです。
つまり自業自得。
「おちゃどうぞー」
「よーかんもどうぞー」
「ご馳走さま。ふむ、妖精もずいぶん可愛らしいじゃないか」
「帝都の高級将校がはべらせている、見てくれだけ整えた守護精霊よりはよほど強いですよ」
「はっはっは! 相変わらずなかなか言ってくれるじゃないか! ……まぁ君が喚ぶくらいだ、そうだろうとも。うむ。どうも根が庶民のせいか、帝都の表通りの菓子よりも口に合うな」
羊羹を口に運ぶ吟堂さん、どうやらお気に召したらしい。
そして帝都の菓子より美味しく感じるって意見は同感だな。
この世界ではとにかく砂糖の量で高級さを競ってるっぽいのがな。
俺なんかは二等級三等級に分類される食べ物のが、前世の日本に近くて安心するんだよね。
「さて、まぁ積もる話はあるが本題を忘れてはイカンな」
本題。
俺の部隊の正式な登録作業だ。
お偉いさんと喧嘩する形で着任したせいで、実のところ俺の部隊はまだ桜国軍には存在しない扱いになっていたのだ。
それでも水晶の納品要求してくんだからよ、あの強突張りどもめ。
無視したんだけどね。
反逆上等! 我がチートパワーに加算されるだけぞ!
それでまぁ、正式な部隊として登録するための手続き、それのために吟堂さんはわざわざ足を運んでくれたんだろう。
◇◇◇
「さてスズリ君、正直に進言したまえ。うちの部隊さ、どういう枠になると思う?」
「一言で済みますよ」
「ほう?」
「イレギュラー部隊」
ですよねー。
そもそも一人で精霊を16人も抱えてるのが異常だもんなぁ。
別に俺が女神チート転生者だから召喚できた……というワケではない。
単純に管理の面倒さと予算の都合、あとは……下級将校に過剰な戦力を持たせないため、かな。
軍規で階級ごとに使役が許されている守護精霊の数が定められているのだ。
「だからこそ私が遣わされたのだな。竜胆中将殿のお心遣いには頭が下がる。まぁ部隊規格は、ことは心配いらないそうだ」
「嬉しくて涙が出ますね。後で何を言われるやら」
「最前線だ。新品中尉を、普通ならば間違いなく殉職する状況に部下を命令で送り出すのだ、使える権限は使ってやりたいのが大人というものだ。前任が根こそぎ持てるものを持って帰ったことだしな。言っておくが自業自得などと口にするなよ。ますます君を甘やかそうとするのが増えるだけだ」
「……できる範囲で気をつけます」
「そうしてくれ。まぁとにかく面倒はないから自由にしてくれて構わないそうだ。物資についてもな。なに、理屈としては君の自腹として処理するから本当に問題はないのだ」
どこまで言葉通りなんだろうなぁー。
問題ない、っていうより問題を揉み消したんじゃないかと睨んでる。
俺はただの女神チートだけど、この世界もけっこう居るんだもの、スゲー人たち。
目の前にいる吟堂さんもその一人。
おかげでなんとも過ごしやすいことか。
ラノベでよくある転生者と現地人の圧倒的格差がないおかげで、むしろ俺は気楽にチートでこの世界を楽しめているからな。
それにしても……部隊編成ねぇ。
精霊ハーレムを望む俺としては人は増やしたくないんだよな。
特に男。
いらん。
女の人は……うーん、料理とか掃除とか、ナキリさんの手伝いしてくれる人はいれば助かるかもしれないんだけど……。
でもそれなら妖精でもいいじゃん、ってなるよね。
その辺も相談しながら、だな。