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ミラクルカウンター[未完]  作者: 次元レベル町内会長
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市井巡察(表) ご近所さんとは仲良くしたい

 部隊が二つに増えた。


 これで魔獣の討伐にも多少の余裕が出るだろう。


 だが、まだ俺の夜の御出陣(意味深)には……まだ早い。


 荒木区長曰く、魔獣の出現頻度は落ち着いているらしいんだが、それでも連日連夜、戦いの連続だ。


 そのおかげで林冲たちを喚べたのだから、全く悪いことばかりじゃないのだけれど……油断はよろしくない。


 万一なにかトラブルが起きて増援が必要というときに、こちらも交戦真っ只中ではさすがにアレだろう。


 せめてあと……そうだな、もう2部隊くらい? あればなんとかなるかもしれない。



 ちなみに精霊と“そういうコト”がそもそもできるのかというと、問題なくできる。


 と、いうかできた。



 軍備幼年学校の時に、ちょっとね?


 言っておくが無理やり迫ったワケじゃなく、ちゃんと同意の上でのゴニョゴニョだかんね?


 というか、精霊とハッスルしようという発想が普通はないらしい。


 あくまで精霊は軍の備品、つまり道具であって人ではない。


 なので人として接する俺は異端者側なワケだ。


 こーゆートコロが全然ピンとこないのが転生者たる所以なのかな。


 他にも精霊たちを大切に扱っている人たちはいるけれど……きっと、何かが違う。


 そう思わせるくらいには、精霊たちの俺に対する態度に違いを感じたからな。



 ◇◇◇



「中尉殿、本日はよろしくお願いいたします!」


 おっと、考え事をしているうちに玄関についてしまった。


 元気はつらつとした若い憲兵官二人と、ベテラン雰囲気でてるオッサン憲兵官が一人。


 オッサンのほうがリーダー的存在かな?



「いえ、こちらこそ。不手際の後始末を手伝わせるようなマネをしてすまない」


「不手際などとご謙遜を。わずか1週間で夜もずいぶん静かになりました。これもみな、中尉殿の尽力があればこそ。なれば、市民への顔見せが多少遅れたとして、誰が不満を持つものでしょうか」


 リーダーさん、さすが竜人族。


 いい意味でクソ真面目な人柄なんだな。



 精霊たちの試合の監督を中断してまで何をするかというと、いわゆる巡回業務だ。


 この一週間、ほとんど駐屯所から出てないので、住民の大半が俺のことを知らないのだ。


 ま、ご近所付き合いくらいは俺が積極的にやってもいいだろう。


 戦闘では基本、役に立たないワケだし。


 しかし……。



「この言葉遣いは……必要なのか? どうも目上の人間に偉そうにするのは…」


「必要です」


 断言されてしまった。


「立場に合わせた言葉の選びは大事なものです。もちろん中尉殿のそのお気遣いは素晴らしいことと思いますが……多少の強気に市井の者らが頼もしさを見出すのも事実なのです」


「腰が低いだけの精霊使いはお呼びでない、か。なかなかシビアだな」


「最前線でありますからな」


 現実は人の見る目を厳しくするのね。


 だがまぁ、命を預けるワケだからな。気持ちはよくわかる。


「まぁ市民に対しては中尉殿の話しやすいようにどうぞ。あくまで精霊使いと憲兵官との区切りのためでありますので」


「そうか。ただ軍服を着るつもりはないぞ。この羽織に文句があるなら―――」


「そこは問題ありません。精霊たちの姿はチラホラと皆知っておりますので、かえってよろしいかと」


 どうやらここは融通してくれるらしい。


 一度見せたらそれで最後、常に襟を正しておく必要が出てくる。


 そんな面倒くさいのゴメンだね。



 ◇◇◇



「えーと、その、巡回中なので、そういうのは……」


「まぁまぁ中尉さん、そう言わずに一つお試しください」



 うん、歓迎はされてるっぽい。


 それはいい、いいのだけど……。


「しかし、さすがに自分が菓子を手に見廻りでは示しがつきませんので……」


 その辺の店先や屋台から食べ物の差し入れが多い。



 そりゃ嬉しいよ?


 でも任務中だよ?


 食い歩きしながら巡回とか……前世でお巡りさんが同じことやったら一発で炎上っすよ。


「これも任務の内でありますよ、中尉殿」


 え、マジで?


 真面目そうな竜人のおっちゃんから予想外の言葉が!


「日頃の交流が心の支えとなることもあるのです。信用とはそういうものでしょう」


 そういうものらしい。


 ならありがたく美味しくいただきましょう。



 小豆の入ったカステラ、正直断りつつも美味しそうだなと思ってたんだよね。


 ……うん。


 コレ、いい。


「いいですね。帝都でも菓子を口にする機会はありましたが……砂糖の味しかしないので、私はよほどのことがない限り口にしようとは思いませんでした。雪甘葛の味は久しぶりです」


「へぇ、さすがに砂糖は普段使いできませんでして。でも中尉さんもお気に召したようで何よりです」


「精霊たちにも、これと同じものを出してくれたのですか?」


「もちろんでございます」


「そうですか。ありがとうございます」



 それは幼年学校時代、精霊とデート中のときのこと。


 向こうは平和なせいか、けっこう精霊の扱いが雑なのだ。


 ま、トラブル起きますよそりゃ。


 精霊相手だからと適当な商売をしてくる商人もチラホラいたんだよね。


 だから、まぁ、失礼だなとは思ったけれど、ちょっと確認せずにはいられなかった。



 ちなみに、あんまり酷いヤツは遠慮なくぶん殴って黙らせた。


 反逆の加護がなかったら大変だったろうな、と。


 女神さまホント最高。



 しかし、懐かしいなぁ。精霊と甘味処デートとか。


 着任の準備で最後のほうは忙しくてほとんど会えなかったけど、あの時の精霊たち、元気にしてるかな?

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