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“銀”の英雄  ~Revival of Andromalius~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第四幕 “ゲフェングニス”の罠

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4‐① 麻婆うどん

ここから第四幕スタートです!

初めて見る方も、最初にこれまでの大まかな流れが入っているのでここからお読みいただいても何ら支障はありません! 是非とも第四幕よろしくお願いします!!!

 星守(ほしもり)コモン・エイドとの戦いに敗れたツミキ・クライムは、海を渡って王都近くの廃棄指定地区“カウルベルン”に連れてこられた。


 カウルベルンには既に一つを除いて建物は存在しない。唯一存在する建物の名は監獄“ヘビヨラズ”。ツミキはヘビヨラズの一室に収監されたのだった。


 そこで出会ったのはアンドロマリウスの元パイロットと同じ名前の少女、シン・クライム。彼女はツミキと同じ部屋の住人である。


 ツミキは何をするにもまず、この監獄について知ることにしたのだった。


――ここはヘビヨラズ、一棟二階121号室。


「じゃ、昼時(ひるどき)だし、ご飯食べに行こっか!」


「え?」


 シンは立ち上がり、首にかかったカードキーで牢屋のロックをすんなり外した。


「えぇ!? 部屋のカードキー持ってるの!?」


「ツミキ君も持ってるよ。ほら、首にかかってるよ♪」


 ツミキはそこで首に紐がかかっていることに気づき、手繰り寄せる。


「ほ、ホントだ!」


 そこにはカードキーが入ったケースがあった。カードキーには液晶部分とプラスチックの部分があり、プラスチックの部分にはツミキの顔写真や部屋ナンバーが入っている。逆に左上の液晶部分には電子文字で“100years”と“2000G”と映されていた。


(“100years”? “2000G”?)


「ほら、食堂いこーよー」


「で、でもこういうのって看守さんに連れて行ってもらうんじゃ……」


「言ったでしょ、ここの看守さんは1人。囚人の数は2360人。一つの部屋ずつ(まわ)るのは無理でしょ~。ほら、部屋の張り紙見て!」


「張り紙?」


 ツミキ達のいる牢屋は畳が敷いてあり、玄関と台所もある。


 ツミキは入り口付近にある台所の上の壁を見る。そこにはでかい張り紙が張っており、タイムスケジュールがマジックで書いてあった。――いや、タイムスケジュールと呼ぶにはあまりに内容のないものだ。


(“夜八時~朝十一時まで牢屋に居ること、破れば厳罰。それ以外自由!”……!?)


「今から夜八時までは自由行動♪ ご飯食べてもゲームやってもOK! お菓子や雑誌、ゲーム機なんかがあるショップは二棟にあるよ。食堂はここの一階!」


「――。」


 ツミキは言葉を失っていた。


(思っていた監獄と全然違う……)


 決してツミキの感覚が間違っているわけではない。

 ここは、この監獄は、根本から仕組みがおかしいのだ。


 ツミキはシンについて行き、一階に降りた。そこには無人の食堂がある。

 ツミキとシンは食堂に入り、電子券売機に近づいた。


「このカードキーにゴールド書いてあるでしょ? これで食券とか買うんだよ」


「ああ、この左上の……」


「一日2000G支給されるの。朝の十一時が区切りだね。この監獄内のモノはどれだけ高くても1000Gが上限だから、よっぽどのことが無い限り余るはず。でも毎週月曜日になったら手持ち金はリセット!」


 シンは券売機の中の“麻婆うどん”を押し、カードキーをかざして買った。すると券売機から無機質な声が響きだした。


『麻婆うどん。受け付けました』


「ここの運営は基本ロボットで、こうやって少し待てば……」


 チーン! と券売機の横にある電子レンジのようなボックスから音が鳴った。


 シンはボックスの蓋を開け、中にある麻婆うどんをトレイごと持ち上げる。


「す、すごい……」


「ちなみに麻婆うどんは200G。基本、食料は安いんだ。飲み物はそっちにあるドリンクバーから取ってね、基本的にドリンクバーとサラダバーは無料だから」


 ツミキはシンの行動をなぞり、麻婆うどんと水を持って食卓につく。正面にはシンが座っている。ちなみにシンのドリンクはメロンソーダ、サイドメニューにチョコレートパフェ(50G)もある。


 ツミキは席に座るとキョロキョロと周囲を見渡した。


「昼時なのに人気(ひとけ)がないね……」


「うん。だって食堂はどこの棟にもあるし、この一棟に居る囚人は僕ら含めて六人だけだから」


「六人!?」


「そ。まず僕達の隣の部屋に居るマリス・マームちゃんとポール・ジュナイ君。そして正面の部屋に居るテンオウ・オルコット君。上の階に住んでるラッキー・ボーイさん。あと僕ら。これで六人」


「でも、この監獄に2360人居るって……」


「全部で50棟あるから、他の棟に残りの2354人はいるよ。うちは特に少ないんだ」


「ちょっと待って。ここだけでもかなり広い印象なのに、他に49棟も建物があるの?」


「建物はそれだけじゃないよ。囚人が開く露店や劇場もある」


(露店!? 劇場!?)


「とりあえずこれ食べよう。そしたら案内するから」


 シンはふーふーとうどんに息を吹きかけ、箸で口に運ぶ。


 もっきゅ、もっきゅと可愛らしい咀嚼音と共に、顔を紅く染め上げた。


「うみゃいねぇ~。やっぱりここの麻婆うどんは格別だよぉ……」


 ツミキは流れで頼んだ麻婆うどんを改めて見る。


(よく見たらコレ、すっごく(から)そうだ……)


 ゴクリと唾を飲みこむ。


(辛いの苦手なんだよなぁ)


 箸で麺を掴み、硬直するツミキにシンは囁くように言う。


「大丈夫。僕が好きなんだから、君も好きに決まってる」


 ツミキは自信ありげに言うシンに疑問を抱きながら麻婆うどんを頬張った。


「――うまい」

「でしょ?」

~ルールその1 支給金~



“ヘビヨラズ”に住む囚人は一日2000G支給される。この支給額が上下することはないが、囚人同士で支給金を受け渡しすることは可能である。この監獄内では1000Gあれば朝・昼・夕・夜とご飯を食べ、娯楽品をなにか一つぐらいは買えるだろう。


~ルールその2 手持ち金の回収~



一週間、支給された金や貰った金は溜めることができるが、毎週月曜日に全財産回収される。この回収された金にも意味があるのだが……


~ルールその3 囚人の活動時間~



囚人は原則として11時~20時まで牢屋の外に出ることができる。だが、もし規定時間内に牢屋に入っていなければ厳罰をくらう。ちなみに囚人が牢屋に入っている時は監獄側の仕入れタイムであり、この時間の内に外からやってきた義竜兵が食料や娯楽品を補充するのだ。


~囚人の労働について~



囚人は決められた労働を課せられてはいない。露店や劇場は囚人側が監獄に許可を取り、金集めとして自発的にやってるに過ぎない。

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