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“銀”の英雄  ~Revival of Andromalius~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第三幕 金色の蛮勇

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3‐⑭ 試験終了

 カミラのアズゥの手より離れた振動剣はケンジの手元のライフルを弾いた。


 アーノルドは突然のことで多くの謎を抱えていた。なぜライフルが落ちている? なぜ剣が飛んでいる? なぜケンジ様は棒立ちしている?


「わからぬ、が!」


 アーノルドはウィリディスを起こした。


(絶好のチャンス!)


 アーノルド、およびウィリディスはすんなりと背後にいるケンジ・ルーパーのアズゥに触れることができた。


『アーノルド&エルフペア。合格!』


 ピスケスからの通信を聞いてガッツポーズするエルフ。


 一方アーノルドはとても喜ぶことができなかった。アーノルドがいるそこはまるで、開戦間際の前線のような空気だったからだ。


 ケンジ機(アズゥ)は右手で払うようにウィリディスをどかす。


 ケンジの表情は一つの疑問によって固まっていた。


(俺の勘違いか? コイツ今……)


 ケンジが考えをまとめない内にカミラ・ユリハは走り出した。その手にはウィリディスが先ほど落としたソルグラディウス(紅蓮の剣)が握られている。


(我が愛剣を!?)


 ケンジは冷静にコンバットナイフを逆手にもって構える


 接近する二機。チェイスのボディ、もしくはソルグラディウス(紅蓮の剣)ケンジ機(アズゥ)に触れればカミラの勝利。ナイフで旗を落とせばケンジの勝利。


 二機はすれ違い様に太刀を振るい、決着する。




「合格だ。カミラ・ユリハ」




 ケンジ機(アズゥ)の右肩の端が焼き切られていた。カミラ機は無傷。


――勝者、カミラ・ユリハ。


『カミラ・ユリハ、アレン・マルシュ。クリアだ。よって、選抜試験は終了だ。全員、直ちに帰還しろ!』


 ピスケスの通信が響く。

 受験者、試験官、見学者。全員が肩の力を抜いた。


(今の一太刀、見事だったよ。カミラちゃん)


「あー、ったく疲れた。帰りの車は用意してくれるんだろう?」


『はい。今回は手伝ってもらってありがとうございました。今、迎えの車を手配します』


「なら、アズゥはもう不要だな」


 ケンジはアズゥを駒形態に戻し、地上に降り立って起動ツールをキャッチする。そしてタバコを咥えながら屋根に腰を落とした。


「っふ。まぁ当然の結果だな」


 アーノルドは無言のカミラに近づき、右手を上げた。


「ハイタッチを許可しよう、下民」


 一件落着。

 全員が油断した所で、事件は起こった。



 ガッ……と、アーノルドのウィリディスは、アズゥの右肘によって屋根から突き落とされた。



「なに!?」


 ウィリディスは推進力を爆発させ、落下のスピードを緩ませるも堅い地面に叩きつけられ再起不能となった。


 一瞬の出来事でナルミ、ピスケス含めた試験官たちは反応できていない。反応していたのはたった一人だけだ。


「おい。聞こえるか、カミラ・ユリハ。止まれ、それ以上近づくと制裁する」


 ケンジは煙草を捨て、ポケットから白色のビショップの形をした起動ツールを取り出した。


「――」


(返事なし。か)


 カミラ機(アズゥ)は右足を一歩、生身のケンジの方へと進ませた。

 駒を右手人差し指と中指の間に挟みながらケンジはカミラを指さして言う。


「撃鉄を起こせ! “ヴァイス”ッ!!」


 白光と共に展開される高性能型(ビショップ級)チェイス“ヴァイス”。

 一眼、白色の高性能型を前にして、カミラは何のリアクションも取らなかった。


「試験は終わった。それでも俺に刃を向けるなら、殺されても文句は言うなよ? 嬢ちゃん」


「……。」


 カミラ機はゆっくりと紅蓮の剣をヴァイスに向けた。


「YESってことだな」


 ピスケスがカミラのアズゥに通信を繋ぐ。


『止まれクソガキ! 試験は終わっている!!』


 返事なし。

 アズゥの内部カメラ映像の中で、彼女は機械的な表情でヴァイスを睨んでいた。


「おい、どうなってやがる! アイツ目がいってんぞ! ――ナルミ!!」


「わからない……」


「あぁ!?」


 ナルミは目を見開いていた。


(あの表情、ほぼ間違いなく意識が飛んでいる。なぜ意識が飛んでいるのかはわからないけど、確実に関わっている物はわかる)


 ナルミは画面越しにカミラの右半身を見る。


「アンドロマリウス……」


 ヴァイスとアズゥはジッと睨み合っている。

 ヴァイスは背にライフルを背負っているが、ケンジが抜いたのは右太ももに括り付けてある二振りの短刀だった。


 何の変哲もない刀だが、強度はソルグラディウスに匹敵する。

 ヴァイスは両手に一振りずつ短刀を持つ。アズゥは両手でソルグラディウスを構えた。


「安心しろカミラ・ユリハ、ちゃんと覚えてるぜ」


――『殺してくれて構わない。だから武器は問わない。俺を殺せた奴は俺の後釜、星守に昇格させてやるよ……』


――『今の言葉忘れるなよ、オッサン』



「来いよ。こっから先は試験(テスト)じゃねぇ、死合(ゲーム)だ」



 その後の戦いは七級隊士と星守の戦いとは思えぬほど拮抗したと言う。



 だが三十分に渡る死闘の果て、立っていたのは一機。



「嬢ちゃんに星守は似合わねぇ。星守ってのは三秦星っていう大三角形を守るための闇だ。嬢ちゃんは、星の隣に立つには眩しすぎる」



 美術館は崩壊し、周囲の建物にまで破壊の跡は続いている。

 瓦礫を踏みしめ、両者は立っていた。



「ちく、しょう……」



 両腕を切り離され、コックピットを短刀の鍔で潰され、カミラ・ユリハは敗北した。


 量産型で慣れない最新鋭タイプのアズゥを使っていたさっきまでと、愛機であるヴァイスに乗っている今とではケンジの戦闘力の差は天と地だ。


 例え、カミラ・ユリハが覚醒したとして到底及ぶ相手ではない。それほど星守という闇はあまくない。


 選抜試験終了。合格者は三名――

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