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“銀”の英雄  ~Revival of Andromalius~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第三幕 金色の蛮勇

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3‐② 金色の少女

 ナルミ。そう名乗った男と共にカミラは車に乗っていた。


 少し太陽が顔を出し始め、陽で照らされた無人の道を車は走る。この街に道路、と呼べるようなモノは無い。車の正面ガラスにデータ上の仮想道路を作り出し、古き良き外観を損なうことなく仮想道路や仮想信号などで交通整理を行っているのだ。


 カミラは助手席から運転しているナルミに聞く。


「俺の知りたいことを教えてくれるって言うからついて来たが、どこに向かってるんだ?」


「僕の家。ちょっと資料を忘れちゃってね、その資料に君が知りたい情報が全て載っている。――ところでカミラちゃん、ちょっと雑談してもいい?」


「勝手にしろよ」


「アンドロマリウスって知ってる?」


 カミラはアンドロマリウスの名を聞いて、いつかの少年の話を思い出した。


「よく知ってる。耳が痛くなるほど聞かされたからな」


「アンドロマリウスが分解され、六つのパーツとなってミソロジア各地に隠されたって話は?」


「知ってるよ」


「そのパーツの内の一つ、アンドロマリウスの右腕がね、賊に盗まれたんだ」


「はぁ!?」


 カミラは目を丸くする。


「それって、結構やばいだろ?」


「そう、やばいね。世間に知れたら抑止力が弱まってしまう。だから大々的に捜査できないんだよ。そこでさ、上の人達が僕に言うんだ。少数の精鋭部隊を作って、アンドロマリウスの右腕を奪還して欲しいって」


「た、大変だな」


「そう、それでなんだけど。君を、僕のチームに招きたい」


「え……」


 ナルミはとある豪邸の前でブレーキを踏み、車を停止させた。


「着いた。ちょっと待っててね」


「いや、その前に今の話……」


「ああ、それは君が君自身の現状を飲み込んでからまた考えて」


 ナルミは車を降りて、豪邸へ入っていく。

 カミラは一人取り残された車の中で密かにガッツポーズを取った。


(え!? ってことは俺、義竜軍に入れるってことか! で、でも俺なんもしてねぇぞ? なんで俺をスカウトしてるんだ? 俺の中に隠された才能を見抜いたってとこかな? やべぇ、やべぇよ! 憧れの義竜軍に、こんな簡単に! ツミキの野郎が知ったら驚くだろうな……)


 カミラは空を見上げ、少年を想う。


「早く会いてぇな……」


「お待たせ!」


「うわ!? 早いなオイ!」


 勢いよく運転席の扉を開け、ナルミは車に入ってきた。

 手には十数ページに渡る資料を持っている。表紙には“スレイク地帯 α‐RH強奪事件碌”と書かれていた。


「なんだか大仰だな。つーか、なんの資料だコレ。俺が知りたいのはサーカス団のことで――」


「まぁとりあえず読んで見てよ。それで全部わかるはずだ」


 カミラは不機嫌そうにじっとナルミを見た後、資料をめくった。

 そして冒頭の文章を見た瞬間に全身が硬直した。


「グエン・センフル――団長が、アンドロマリウスの右腕を隠し持っていた……?」


 カミラは冒頭で一気に引き込まれ、ページをめくる。


(“アーノルド・ミラージ率いる義竜軍スレイク小隊はグエン・センフルがアンドロマリウスの右腕を隠匿しているとの告発を匿名で受ける”――)


 読み進めれば進めるほどカミラの表情は曇っていく。


――アーノルドはサーカス団“モーニング・フェイス”を強襲する任務を三秦星ペガより受け、実行する。


 ページを読むスピードが加速していく。


――アーノルド率いる小隊はサーカス団を壊滅させるも、アンドロマリウスの右腕をトリゴを操る一団に奪取される。


――砦にて、ハングゥコルン及びトリゴと交戦。アーノルドはハングゥコルンを壊滅させるもアンドロマリウスの右腕を取り逃がす。


――アーノルドがアンドロマリウスの右腕を奪取された責任を負い、スレイク地帯を離れた後、三級隊士のアメンバは賊の手掛かりを探すため、“モーニング・フェイス”のテント跡地を捜索。目ぼしい資料や物品は無し。アメンバ三級隊士は状況を終了させた。


――記録:モーニング・フェイスのメンバーで此度の決戦において出た死傷者約87名。生存者は――


「“1名。名簿からカミラ・ユリハと断定”……だと? ふざけるな!!!!!」


 カミラは書類をフロントガラスに叩きつけた。


「でたらめだ! こんなこと、あるはずがねぇ!! 嘘だ、ありえない!!!」


「落ち着いて、カミラちゃん」


「大体、俺が生きていて他が死んでるなんてありえねぇだろ! 俺は確かにあの時、大砲を直に受けたんだ! そんな俺を助けられた技術があるなら――」


「君は……特別なんだよ。その右半身を見るんだ」


「右半身?」


 カミラは己の右手を見る。


――そこには黄金色で、温かみの無い右手があった。


「は?」


 右手だけじゃない。

 右足の先から、黄金の機械が右半身を這っており、右目まで支配している。カミラの右目は青く輝き、その瞳に映る視界には通常の瞳では得られない情報・文字が羅列していた。


「う――うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!??」


「それはアンドロマリウスの素材と言われているリウム合金だ。リウム合金は人体に溶け込むと、強力な再生能力を人体に付与する。君はその力で焼け落ちた右半身を再生させた。――だけど、君の感情が昂るとリウム合金で修正した箇所が変容し、黄金色のサイボーグと化す。君だけなんだ。カミラちゃん。あの破壊の跡で、君だけが奇跡的に助かった……」


 カミラは汗を垂らしながら声を震わせ、ナルミに問う。


「ツミキは……? ツミキは、生きてるんだよな?」


 ナルミは正面を見据えながら、冷たく言い切る。


「そのツミキ君がサーカス団のメンバーだったのなら――死んでるよ」

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