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“銀”の英雄  ~Revival of Andromalius~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二幕 水の都“アーレイカプラ”の戦い

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last episode “もう一人の序章”

『力を与えよう。但し、この力は全てを破壊する力。守ろうとしたモノも、壊そうとしたモノも、全てを破壊する。』


『そして、全てが終わった時、代償として少年から大切なモノを頂くとしよう……』


『少年の中で、()()()()()()()()()を』。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「うっ――」


 アーレイ・カプラの戦いから二日過ぎて、ツミキ・クライムは目を覚ました。

 背中にはフワフワとした、けれども少し硬い温もりがある。ツミキは半身を起こし、膝に毛布が掛かっているのを見て自分が布団の上に居ることを理解した。


「ここは……?」


 ツミキは周囲を見渡す。


 まず正面に鉄格子。右方向に剥き出しのトイレ。左方向に机がある。椅子に類するモノは無かった。

 ツミキはそれらの情報を得て、己の立場を理解する。


「捕まったのか、僕は」


 どこか諦めたようにツミキは呟いた。


(最後、波に攫われたのを覚えている。コモンさんは銀腕に目をくれず、僕の方を取りに来た。そして二人で海へ流された……あの状態から孤島へ行ってプールさんたちを倒すのはさすがに無理だろう)


 脳裏に焼き付いているのは無意識の中で漆黒の騎士と戦った記憶だ。


(アレが、アンドロマリウスの本質。魂を喰らう力……僕の体を媒介にして、めちゃくちゃな力を振るっていた。――だけど、あれだけの力をもってしても)


――『所詮は獣。思考は読めずとも習性は読める』。


「僕は、勝てなかった。あれじゃダメなんだ。もっと、もっと僕自身が力を付けないと……」


「そうそう、星守に勝つには“理”のない力じゃ駄目だよ」


「え?」


 ツミキは不意に話しかけられ呆気ない声を漏らした。

 ツミキは声の出所を探すが見つからない。すると、ゴソッと布団の中から小柄な少女が姿を現した。


「うわぁ!?」


 ツミキは驚き、布団から飛び出す。

 少女は目を凝らしながら、ニコッと口元を歪ませた。


「おはよう。ツミキ君」


「お、女の子!? ふ、普通……こういう所って相部屋にするにしても、同姓にするんじゃないのか!? っていうか、どうして僕の布団に!?」


「いやー。だってこの部屋布団一つしかないし。それに、純粋に僕は君と一緒に寝たかったんだ。ツミキ・クライム君♪」


 少女は真っ黒で艶やかな髪の持ち主だった。艶やか、と言っても見えるのはもみやげだけだ。なぜなら彼女は布団を被り、目元まで隠していたからだ。布団の隙間からはスカートと黒いセーターが見える。


 年齢はツミキと同じほどだろう。鼻から上はほとんど見えないが、それでも可愛いとわかるほど他のパーツが洗練されている。そんな女子が、布団に潜り込んでいた事実を前にして――ツミキはなにも感じなかった。


 あるのは驚きだけだ。可愛いとわかっていても、それは客観的な意見であってツミキ自身は目の前の少女を可愛いとも可愛くないとも思えなかった。


 ツミキはこの異様な感覚から、半ば反射的に問いかけた。


「君は、誰?」


 ツミキが聞くと、少女は笑い、名を名乗る。


「僕はシン。シン・クライム」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ツミキ・クライム。彼を反政府側の正義だとするならば、彼女は政府側の正義だ。


 正義は絶対でなく、一つの正義に無数のアンチテーゼが存在する。


 きっと彼女は、ツミキ・クライムの正義に対する無数のアンチテーゼの中の一つに過ぎないのだろう。




――とある病室。そこで少女は眠っていた。




 体中に最新機器を纏い、右目はホースのようなモノで塞がれている。彼女はここですでに六日間も目覚めずにいた。


 しかし、彼女の閉ざされた左目が六日ぶりに開いた。



「ツミ――キ?」



 王都オーラン、中央病棟305号室。

 そこで、この先ツミキにとって最大の障壁となる人物が目を覚ました。

第二幕、完!

ここまで読めた方、お疲れ様です! 心より感謝いたします。

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