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“銀”の英雄  ~Revival of Andromalius~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二幕 水の都“アーレイカプラ”の戦い

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2‐㉟ 愚者の灰影 その3

 赤い流星がスタジアムに降り注ぐ。一撃一撃が二十メートルほどのクレーターを作る爆発力、チェイスがまともにくらえばひとたまりもないだろう。


「規格外すぎるな……あれがアンドロマリウスのパーツに共通してある性能だとするなら――ペガ様め。こんなゲテモノを私に握らせていたのか」


 コモンはバイク(グリース)を全速力で動かし、エネルギー弾を躱していく。

 コモンが目指すは安全地帯。この弾幕が避けている場所だ。


(こういう時、一番安全なのは――)


 ネグロはグリースに乗って一直線に灰影に向かう。


「そこ、ですよね」


 弾幕が避ける場所、それは攻撃をしている本体付近である。コモンは一息で詰められるところまで迫るが、


「――!?」


 八発のエネルギー弾が灰影を囲うように落下した。


(そう来たか……!!)


 ゴオォンッ! 同時に赤弾が円を描き炸裂。

 爆発による黒煙がコモンの視界を奪う。


「視界を塞がれるのはまずい――」


 ネグロは一度バイクを止め、槍を一回転させて煙を払う。すると、煙が消えた所からネグロの目前に灰色の左腕が迫っていた。


(どう、して……?)


 さっき切り落としたはずなのに――とコモンは煙の隙間から二十メートル先にいる灰影を見る。



 【〔『〖「グ」〗』〕】


 灰影はなんてことない様子で左腕を生やし、コモンを見据えていた。


(少しは、ロボットらしい動きをしてほしいものだ……!)


 ガッ!! とネグロは右肩を灰影の左手に捕まれバイクより引きずり落とされる。その刹那、コモンはグリースを遠隔操作し、グリースのみをその場から離れさせた。


「動けない……この細い指で全身の関節を決めている」


 灰色の五指が伸びてネグロの全身にまとわりつく。


【〔『〖「コポっ」〗』〕】

「ぐっ……!?」


 灰影の口に赤いエネルギーが溜められる。今度は空に放つことなく、すぐさまネグロに向けられた。


【〔『〖「ヒュ」〗』〕】

「グリース!」


 咆哮を放つ寸前、灰影は青色のバイクに轢かれた。


【〔『〖「ウウウウウウウゥゥゥゥッ!!!!」〗』〕】


 バッ! と赤く細いビームが灰影の口から放たれた。

 ビームはネグロの遥か右を通過し、客席に着弾。着弾すると扇状にエネルギー破が弾け、アーレイ・カプラの街の中枢を焼き払った。


 灰影を轢きながらグリースに突き刺さった銀鍵が糸にばらけ、灰影を束縛しようと伸びる。

 コモンは神糸(モイラ)で灰影を追撃しながらグリースを遠隔操作して両脇の機銃から灰影の伸びた左腕を撃ち破り、ネグロを解放させる。


(よし……)


 ネグロの指が動き、神糸の動きが加速する。


【〔『〖「コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」〗』〕】


 灰影は変幻自在の糸に対して、体積を捻じ曲げながらステップを踏み、軽やかに躱していく。そして隙を見て、足を一瞬だけ止めて再び天空に八発のエネルギー弾を放った。


 コモンは空に上がった光を見て、「芸の無い……」と呟く。


「一度見れば、もう対策はできています」


 コモンは神糸を手元に引き戻す。

 ネグロの黒槍、その矛先に神糸は結ばれ、矛先から二十メートル糸を伸ばしたあと毛玉のような塊を作った。その見た目はまるで釣り竿のようだった。


 ネグロは手元で黒槍をくるくると回し、赤い流れ星を待つ。


「来た」


 凄まじい速度でネグロに向かう八発のエネルギー弾。ネグロが槍を振り上げると糸がしなり、神糸の塊が浮き上がる。


 そのまま思い切り黒槍を横に振るい、己より二十メートル離れた位置でエネルギー弾を神糸の先の糸玉によって迎撃した。


(ん?)


 コモンはその時たしかに見た。エネルギー弾が神糸で結ばれた玉に触れた瞬間、力なく分散した所を。


(なるほど。そういう性質か)


 残り七発。ほぼ同時に降り注いできたエネルギーの塊をコモンは釣り竿に改造した黒槍で容易く迎撃する。


 だが、迎撃に集中していたせいで灰色の影を見失った。


「どこに……?」


 スタジアムの中に灰影はいない。

 ポタ。ポタ。とネグロの所へ降ってきた灰色の雨粒で、コモンは全てを理解した。


 コモンは空を見上げ、ゾッとする。


【〔『〖「コポポポポポポポポッ。コポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポッッ!!!!!!!!!!!!!」〗』〕】


 ネグロの真上。遥か上空に奴は居た。


 コモンは急いで糸をかき集め、黒槍にネジ巻く。

 黒槍を支柱に、てっぺんからニ十本の骨組みを作って円形になるよう広げる。骨組みを覆うように薄い糸を布の様に構築する。そうして出来たドーム状の屋根を持った黒槍を持ち、一度屋根を絞って黒槍と一体化させ、投擲の構えを取る。


(この辺か)


 ネグロは銀色の布を纏った黒槍を灰影に向かって投げた。




【〔『〖「カアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!」〗』〕】





 先ほどと同じように細く、だが膨大なエネルギーを孕んだブレスを灰影は真下に放った。


(今だ!!)


 ネグロがタイミングを見て右腕を引く。すると、右腕から伸びていた神糸が黒槍と連動し、黒槍と神糸で作った傘が開かれた。


「散れ」


 赤いビームが銀傘とぶつかる。ビームは傘に当たると四方に飛び散った。

 飛び散ったビームは海を裂き、地を砕き、空を割った。



(理屈はわからないですが、あの光線……真っ赤なエネルギー体はアンドロマリウスのパーツにぶつかると分散する。余波が自分の所に届かない範囲でパーツをぶつければ怖くない)


 灰影は空中よりネグロの正面に着地し、銀傘もネグロの手元へ戻ってきた。コモンは傘を分解し、銀色の槍を作り出す。右手に黒槍、左手に銀槍。グリースを背後に停め、地に足をついて二槍を構えた。


(あまり、仕事にこういう感情を持ち込むべきではないですが……)


 コモンの口元は僅かに歪んでいた。


「やはり、昂ってしまうな。難敵との戦いは……」


【〔『〖「ググ。グぐぐぐぐっぐぐぐぐっぐぐぐぐぐうぐうグググググ」〗』〕】


 二槍の騎士と灰色の悪魔。勝負の決着は近づいていた。

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