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“銀”の英雄  ~Revival of Andromalius~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二幕 水の都“アーレイカプラ”の戦い

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2‐⑫ 盗賊の神と海の神

 “カプラパレード”当日の朝。

 不運なことに大雨が降り、太陽も雲に隠されて薄暗い。そのことに多少の苛立ちを覚えながらケインたちは第一層の王城にて集まっていた。


「さぁ開演の時だ。我が同胞たちよ」


 豪華絢爛。黄金に囲まれた大部屋、その中央にある巨大な玉座に彼は座っていた。


――アーレイカプラの王、三秦星デネヴ傘下“ケイン・マッケル”。


 正面には赤髪美男美女コンビアルベルト兄妹。側近にして右腕レイン・アベット。そしてその後ろから三秦星ペガと星守コモンが歩みよって来ていた。


「おはよう。ケイン・マッケル」


「これはこれはペガ殿。なにか御用かな? 今はカプラパレードを前にした最後の打ち合わせ。邪魔しないでいただきたいですなあ」


 ケインの物言いにコモンが立場上仕方なく反論する。


「ペガ様はアナタより階級が上です。言葉を控えてほしいですね」


「さがってなさいコモン。心無い言葉を口にするものじゃないわぁ♡」


 ペガはコモンを下がらせ、瞳を輝かせる。


「ポセイドン。見させて貰ったわぁ♡ すごい兵器ねぇ」


「当然。私が誇る最高の宝ですから」


「ただ、まだ未完成でしょう?」


 ペガの指摘にケインの表情が固まった。


「だっておかしいでしょう? 水流操作装置自体は第二層の設備で事足りているのに、なんで第三層にあんな大仰な装置があるのでしょうね♡」


「ほう。ペガ殿は一体なにが言いたいのか。私にはさっぱりわかりませんなぁ」


「第三層の存在意義、水流操作のためじゃない。そう、あそこはもう一つの機械を動かすためにある」


「御冗談を」


「――アーレイ・カプラ。浮いてるでしょう?」


 ジリ。と部屋の空気が一変する。


「浮いてる? まさか。しっかりと地に足ついた島ですよここは」


「アクアロードが拓かれる時はついている。けど、拓いていない時は浮いている。間違いないわぁ、水深、ずっと測らせてもらったから。水流操作装置と浮遊装置、この二つを利用してあなたが作ろうとしているもの、それは――」


 ペガの瞳に浮かぶハートが大きくなる。


「海を自由に移動でき、尚且つ海を自由に支配する海上移動要塞。その名前こそ海の神“ポセイドン”」


「やはり、ただ観光に来たわけではなかったか」


 ケインが指をパチンッと鳴らす。


 瞬間、アルベルト兄妹とレインは発展型(ナイト級)起動ツール()を握った。そして同時に起動式を叫ぶ。


「捧げろ! “アーテル”ッ!!」


「叫べ! “アルブス”ッ!!」


「弾けて! “フラーウム”ッ!!」


 アルベルト兄の発展型チェイス“アーテル”。


 アルベルト妹の発展型チェイス“アルブス”。


 レインの発展型チェイス“フラーウム”が同時に大広間にて展開された。


『そこまでバレちゃ帰せないねぇ、ハニー』


『当然よダーリン』


『申し訳ございません。ここで沈んでもらいます!』


 ペガは目の前で三機のチェイスが展開されたのに眉一つ動かさず、コモンに命じる。


「蹴散らしなさい」


 その一言を受けてコモンはペガを守るように前に出た。


「はい」


 コモンは人差し指と中指の間にビショップの形をした駒を挟み、その起動式を呼ぶ。



「出勤の時間ですよ。――“ネグロ”」



――十秒にも満たない出来事だった。



 たった数秒で発展型三機は地に伏した。立っているのは長槍を握った漆黒の人型高性能型(ビショップ級)チェイス一機のみだ。細くも太くもない身体、ゴツゴツとした鎧のような装甲が印象的でまるで西洋の騎士を思わせる姿。


 名を“ネグロ”。コモンと共に“通り魔”の異名を持つチェイスである。


 アルベルト兄妹とレインは今、起きた現象に理解が追い付いていなかった。


(あ、ありえない……)


(今、私たちはなにをされた!?)


(次元が違う。この先、どれだけ努力しても追いつけないと断言できる。これが星守、世界トップクラスの力……)


 ケインはパチパチと拍手をし、玉座に座り直す。


「さすがは星守。()()()を隠してこの力とは。溢れる才能、そして血もにじむような努力をしたに違いない。一体どれほどの研鑽を積めばその領域までたどり着けるものか」


『私はただ出された任務をこなしてきただけです。それ以外なにもしていませんよ』


 ペガはコモンが展開した高性能型チェイス、ネグロの左手の上からケインを見下ろす。


「ケイン。完成するといいわね、ポセイドン」


「ミス・ペガ。貴方は観察を選択するか」


「ええ。アルタイル様に報告するような無粋な真似はしないわぁ。この街の結末を楽しみにしてる。――ああ、そうそう。最後に一つだけ忠告しておくわ」


 ペガの瞳からハートマークが消える。


「海の神もいいけど、盗賊の神を忘れちゃだめよ♡」


 そう言い残してペガは“ネグロ”と共に壁を突き破って去っていった。


 ケインは下衆な笑みを浮かべてその背中を見送る。


「盗賊如きに海は負けんよ」



 * * *



 第三層にてツミキ一行と凰燭軍残党、そして第三層の住民は集まっていた。

 ツミキはサンタより作戦の内容を聞いて汗を滴らせている。


「スケールのでかい作戦ですね……僕に上手くできるでしょうか?」


「別にそんな気負う必要ないわよ。アンタが失敗したら私たちみんな死ぬだけだから」


「わざと言ってます?」


「かっかっか! ワシはなーんも心配しておらんぞ。(ぬし)ならできる! 自信を持て」


「楽観的すぎません!?」


 ツミキが自分の役目に責任を感じているとツミキの足元に小さな女の子、“ポーチ”が三角形の綺麗な貝殻をもって駆け寄ってきた。


 ツミキはポーチに気づき、地に膝をついて目線を合わせる。


「どうしたの? ポーチちゃんも早く避難場所に」


 ツミキが言うとポーチは手に持った貝殻をツミキに差し出した。


「これ」


「これは……」


「お守り! すごくめずらしい貝殻!」


 ツミキは貝殻を受け取り笑顔でポーチの頭を撫でる。


「ありがとう。これがあれば何だってできる気がするよ」


 ポーチは頷き、大人たちの方へと戻っていく。


 プールはサンタとの会話を思い出しサンタを睨む。プールの睨みに対しサンタは自慢げに胸を張った。


「さて。準備はよいか皆の者?」


 サンタの問いかけに対し全員が覚悟を秘めた表情で応える。


「では開戦と行こうか! 海の神は今日、我らの手で――討伐(ころ)す!!」


ここまで長かった……

ちなみにアルベルト兄妹のチェイス、というか発展型は元のタイプが量産型のため修理は容易です。しかし量産型のパーツで破損個所を補うため損傷が激しいほど機体性能は落ちます。今回アルベルト兄妹たちが使ったチェイスは二機とも基本性能の半分が量産型レベルまで落ちてます。ただ鞭とかその他武器、メインエンジンは万全です。

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