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“銀”の英雄  ~Revival of Andromalius~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二幕 水の都“アーレイカプラ”の戦い

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2‐① 目指すは水の都

 廃棄指定地区“ドナー”から旅立ったツミキ、サンタ、プールは軽トラックに乗って景色の変わらない草原の道を走っていた。


 運転席にはプール、サンタとツミキは荷台に乗っている。ツミキは歴史書を読みサンタは【詰め将棋入門】と書かれた本を読みながら一人で将棋の駒をいじっている。


「あー、運転飽きてきたわぁ~」


「そうですね。こうも景色が変わらないと気が滅入ります」


 プールが愚痴をこぼすとプールの心境を表すかのように日が落ち始めた。


「暗くなってきたのう。うむ、ここらで野営するとするか」


 ドナーから旅立ってすでに二日。村には出会っても都市には出会わない。

 ツミキたちが住むミソロジアは世界でトップの広さを誇る国だ。しかし、その大きさに反して街は少ない。ゆえに都市と都市の間はかなり長いのだ。


 一行は森に囲まれた場所で火を焚き、前に訪れた村で仕入れた魚を焼く。


 ツミキは塩味の付いた白身魚かじりながら二人に問う。


「そういえばアンドロマリウスの右腕はどこにあるんですか? 目が覚めた時にはもうありませんでしたが」


「ん? 気づかなかったの? トラックの底にくっ付けてあるわよ」


「え!? あの荷台の下に!?」


 ツミキはずっと荷台の下に感じていた違和感にようやく気付いた。


「アンドロマリウスのパーツは圧縮できん。かと言って荷台に乗せていたら目立つじゃろう?」


「それにアンドロマリウスのパーツは接触しているメカの力を上昇させる効果がある。おかげであの軽トラはいざとなれば以前の二倍のスピードが出るようになったわ。あぁそれと、アンタに渡した隻腕のアズゥが起動した時、自動的にアンドロマリウスの右腕が反応して射出するようにプログラムしておいたから、一キロ圏内なら三秒以内に合体もできる」


「射出……あの右腕、飛べるんですか?」


「右腕だけならね。アズゥを持ち上げるほどの力はない」


(アンドロマリウス……やっぱり、常軌を逸した性能だなぁ)


 ツミキは思い出す、あの砂漠地帯での戦いを。アーノルド、そしてシーザーとの戦いを。


 アンドロマリウス。千年続いた戦争を止めた世界最強のチェイス。その性能は例え右腕一本であろうと他のチェイスを寄せ付けない……


「この右腕があれば同じアンドロマリウスのパーツを持ち出されない限り負けることはありませんね」


 プールはツミキの発言に目を細める。


「甘い。世の中には機体の性能差なんて簡単に覆す化物がいるのよ、最低でも三人はね」


「そうか、ツミキはまだ“三秦星(さんしんせい)”についても“星守(ほしもり)”についても知らんかったな」


「いえ、三秦星は知っています。ミソロジアが誇る三人の天才軍師、『三秦星はシロアリで城を落とす』と言われるほどの人達ですよね。でも星守については……」


 三秦星。稀代の名軍師。


 ミソロジアの強さは圧倒的武力、そして圧倒的な知力だ。理由なき戦争の勝敗を決定づけた要因は二つあると言われ、片方はアンドロマリウス、もう片方は三秦星と言われている。


「その三秦星を守るパイロット、それこそが星守じゃ。三秦星の数と同じ、三人いる」


「星守はいつだって自分の担当の三秦星にくっついて護衛している。全員が全員分野別で最強と謳われるパイロット。間違いなく、今後の歴史書には三秦星と共に名前を刻む化物、言い換えれば英雄よ」


「す、すごいですね……三秦星も星守もサンタさんやプールさんより上ってことですか?」


 ツミキは言い切ってから自分の愚かさに気づく。


 プールとサンタの目の色が変わった。なにか思うところがあるようだ。二人は魚を一気に食べきり、同時に言い放つ。


『まぁプール(サンタ)星守(三秦星)に劣る(けど)ワシ()三秦星(星守)より上じゃな()


 両者共に一瞬硬直し、睨み合う。


「お主が星守よりうえぇ? その内の一人にコテンパンにやられたのは誰じゃったかのう?」


「はぁ? 機体スペックの差で押されただけだし、アンタこそアルタイルに負けた負け犬でしょう?」


 ツミキは一触即発の空気に割って入る。


「まぁまぁ……二人共強いってことでいいじゃないですか? ――そ、そんなことより次の目的地はどこなんですか? アンドロマリウスのパーツのありかに見当は付いているんですか?」


 なんとか話を切り替えようとするツミキ。


「ま。王都には確実にあるでしょう」


 どうやら話の切り替えは成功したようだ。


「王都、つまり“オーラン”ですよね? ――そういえばサーカス団の元締めはどうなったんだろう」


「ワシもグエン・センフル、お主らの団長の実家に用があるから例えパーツが無くとも王都を目指して損はないじゃろう」


「決まり。最終目的地はオーランね」


 しかし。とツミキは王都の場所を思い出す。


 上手く交通機関を使ってもここからなら三日はかかる。ツミキ一行は正規なルートで王都に行くのは不可能だろう、賊である事実がどこかで必ずバレる。


 なら迂回ルートを探すしかない。その見当をすでにサンタは付けている。


「王都へは海からのルートで行く」


「海? 船なんて持ってたんですか?」


「いいや、持っておらん。だからオーラン行きの船に潜入し、運んでもらう。つまり――」


「密航か。面白い」


 ツミキはそこでサンタとプールがどこを目指して進んでいたか理解した。


「ここから近くてオーラン行きの船がある街、そんなの一つしかない!」


 目を輝かせ、その街の名を口にする。




「水の都“アーレイカプラ”!!」


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