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“銀”の英雄  ~Revival of Andromalius~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第六幕 美術都市“アート・キングダム”
147/166

6‐① アート・キングダム(挿絵あり)

挿絵(By みてみん)



 “アート・キングダム”は街を囲むように巨大な壁が設置されており、壁から二十メートルほどのところを川が流れている。川を越え、壁を越えなければ中にたどり着けない。古風ながら効果的なセキュリティだ。


 東西南北それぞれ一か所ずつ、合計で四か所の入り口が存在しており、“アート・キングダム”に入るにはここを通るしかない。ちなみに北門は亀をモチーフにした装飾が、東は龍、西は虎、南は雀をモチーフにした装飾がされている。


 ツミキは西の森から出て、グルッと外壁をなぞるように周り、西門の正面にたどり着いた。


「すっごい……でかい、白い虎だ」


 白い虎が描かれた巨大な門が川を挟んだ先に見える。

 門の前には斑模様の石床が幅広く展開されていた。その床の上では多くの観光客、そして人形らしき小人が警察官の恰好をして蠢いている。


(人形? なんだろう、可愛いな)


 ツミキは橋を渡り、向こう側にたどり着いた。


「よし着いた――って、うわ!?」

『ミシラヌニンゲン。ミシラヌニンゲン』


 息つく間もなく小人人形たちがツミキの足元に寄って来る。あっという間にツミキの周囲は人形に包囲されてしまった。


『自己紹介求ム』

『パーソナルカード提示せよ』

『招待状』


「え? えぇ!?」


 美術都市“アート・キングダム”の中には世界有数の美術品が多く集う。

 そのため、警備は厳重であり、蟻ですら身分証明書を提示しなければ入れないほどだ。


『えーっと、招待状も無ければパーソナルカードも無い。ちみぃ、何しに来たの?』


「あっはは……(いきなり話し方が流ちょうになったな、この人形)」


 当然、テロリストの少年が易々と入れる場所では無かった。


(弱ったな……そういえばテンオウが『世界最大のセキュリティを誇る場所』って言ってたっけ。すっかり忘れていた)


『ちみぃ、ちょっと怪しいね』


「え?」


『なんか服も汚いし、どうも美術に関心があるとは思えない身なりをしている……怪しい!』


「うわっ!?」


 ガタガタガタッ! とブロックの兵士が集い、ツミキを囲う。

 ツミキは愛想笑いを浮かべながら「ちょ、ちょっと……?」と一歩引く。


『荷物検査をさせてもらう!』

『にもつけんさ!』

『ニモツケンサだぁ!』


「荷物検査~!?」


 ツミキは右ポケットにある()()に気を配る。


(まずい! ポケットの中のチェイスが見つかったらただじゃすまない!!)


 周囲の観光客と芸術家の目が集中する。

 ツミキが逃走する覚悟を決めると同時に、男の声が響いて来た。



「待ちたまえ。彼は私の友人だよ」



 紙袋を持ち、赤毛の芸術家は現れた。


「あなたは……?」


『エレウ様!』

『エレウ・クラテス様!』


「お疲れ様。“警備兵(ニート)”の諸君」


 エレウ・クラテス。ツミキが見上げるほどの身長の男だ。穏やかな美形の持ち主、その瞳にはなぜか光が宿っておらず空虚だ。


 ツミキは彼と視線を交錯させる。


(初対面……だよな?)


 赤毛の男性エレウは警備兵に言う。


「彼を解放したまえ」


『しかしエレウ様、身分のわからぬ者は……』


「私が保証しよう。彼の名前はツミキ、私の遠縁だ」


 ツミキは名前を呼ばれ、ビクッと肩を震わせる。


(どうして僕の名前を……?)


『で、ですが……』


 なお食い下がる警備兵。

 エレウは声色を低くして言う。


「どうしても通さないと言うなら……」

『ゴクリ』


 エレウはゴゴゴゴッ!! と効果音を背景に警備兵を睨み、突拍子のないことを言いだした。




「一晩中、私がここで歌う」




『ひえっ……!?』



 エレウが『歌う』と言うと、その場にいた全員が背筋を凍らせ、いつかのトラウマを蘇らせた。

 小人人形たちはサーッと道を拓き、『どうぞ……』と門を開けたのだった。

冒頭の挿絵は十年前のアート・キングダムの入り口です。なぜ十年前かは、またいずれ( ´艸`)

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