5‐⑤ vs追跡チーム その4
銀腕と輝光剣がせめぎ合う。
カミラはアズゥの銀腕、アンドロマリウスの右腕を見て目を細める。
(それは……)
――『行き過ぎた力は人の調和を乱し、戦争を引き起こす』
(その腕は……)
――『人を狂わせるのはいつだって、力だ』
「あってはならねぇモンなんだよ!!!」
輝光剣の出力が上がり、アズゥは一歩後退する。
赤髪の弓兵は隙を狙い、トリゴから距離を取る。
(ナルミ様が予定変更してくれて助かった。思っていた以上に相手の戦力は大きい。たった三機じゃ最悪全滅していた……)
鍔迫り合いを繰り広げる二機の横をエルフのチェイス“ヴェルメリオ”が通り過ぎる。
『カミラ! わかってると思うけど――』
『ああ! 適当に相手したら撤退する!』
ヴェルメリオを追撃しようとトリゴはライフルを構える。
「逃がすか!」
『邪魔するんじゃねぇっ!』
アウルムの右手から盾が投げられる。
盾は空中で横回転しながらトリゴに接近し、盾の先端から飛び出た輝光刃でライフルごとトリゴの右腕を焼き切った。
「プールさん!!」
(投擲盾ッ!?)
ツミキは「このっ!」と銀腕で輝光剣ごとアウルムを押し返し、距離を取る。
アウルムは両手で輝光剣を持ち、出力を上げ刃を一瞬だけ伸ばし横に振るう。
『“蛇突き”ッ!!!』
(これは――トート・ゲフェングニスが使っていた技)
蛇突き。輝光斬撃をヘビのような形で飛ばす輝光剣の技だ。
ツミキは飛ばされた輝光を銀腕で弾き、問答無用で距離を詰める。
『弾き消された!?』
接近するツミキを迎撃しようとカミラは輝光剣を振るおうとするが、ツミキのアズゥは足を止め、なぜか頭を下げた。――次の瞬間、投擲されたトリゴの斧がアウルムの顔面を捉えた。
『ちっ……!』
斧で顔面を破壊することはできなかったが重心を崩すことはできた。
怯んだアウルムに対しアズゥの銀腕が下から迫る。カミラは躱そうとするが、顔面の代わりにアウルムの右腕を削り取られた。だがカミラは負けじと左手に持った輝光剣でアズゥを狙うが、
「右わき腹、0.8」
「あいよ」
アズゥの背後から迫って来たトリゴ、その左手のナイフで輝光剣の柄の部分を止められる。
(コイツら、連携が上手い!)
右腕を失い、左手をトリゴに止められた。無防備になったアウルムに銀腕が迫る。
カミラが頭に思い浮かべるは、たった一つの文字……
(死――)
否。
『――んでたまるかよっ!!!』
カミラの瞳に炎が灯る。
――開花型心能〈火事場力〉。
カミラ・ユリハは追い詰められればられるほどその力を増すのだ。
潜在能力を開花させたカミラは左手の輝光剣を手放しフリーにし、襲い掛かって来た銀腕をアウルムの左手で左側から肘の部分を掴む。そしてそのまま銀腕を引っ張り銀腕でトリゴの左肩を強襲した。
「な――」
「んだオイっ!?」
銀腕がトリゴの左肩に突き刺さる。
アウルムは距離を取り、腰からもう一つの輝光剣を取り出して光刃を出し、二機を同時に仕留めようと振るう。
「(まずいっ!) ――禁呪解放ッ!!」
ツミキは咄嗟にアズゥの禁呪を解放、強化された身体能力でトリゴを抱えて飛びのいた。
プールは相手のパイロットに得体の知れない何かを感じ、ツミキに指示する。
「私はいい! アイツを仕留めろ!!」
「でも――」
「いいからやれ!」
「……わかりました!!!」
ツミキは両腕を失ったトリゴを置いてアウルムに迫る。
強化した身体能力で片腕のアウルムを追い詰める。
アウルムの目を裂き、二振り目の輝光剣を握りつぶし、追い詰め、追い詰め、追い詰めるが――
(ど、どうして!? 追い詰めれば追い詰めるほど、むしろ距離が――)
アウルムは左脚のホルダーにかかった組み立て式の槍を手に取り、組み立てる。
「槍を組み立てた!?」
『投擲槍〈ロンヒ〉……!』
出来上がった鋼鉄槍の連撃でアズゥを襲う。
(×印の数が多すぎて絞り切れない!)
攻守一転、ツミキは禁呪解放を使っているのにも関わらず、防戦一方になっていた。
「こんなことが……!」
『ここで仕留める……!』
槍の連撃を浴び、跪いたアズゥ。
アウルムは上から槍を突き下ろす、アズゥは銀腕でその槍の矛先を掴む。
「このまま握りつぶして――」
ガガガガッ!!! とアズゥのコックピットに弾丸が炸裂した。
アズゥ、そしてツミキは突然の奇襲に怯む。
(危険信号が、追いつかないっ!!!)
ツミキは視線を上げ、アウルムのこめかみの部分に銃口を確認した。
「ヘッドバルカン……!」
怯んだアズゥを一方的に槍で殴るアウルム。
(相手が強い。だけどそれだけじゃない、さっきから頭にガンガンと雑音が……!)
――『ツミキ! 俺達はいつか英雄になるんだ!』
「くそっ……!」
頭の痛みに参ったのか、ツミキは操縦桿から手を放した。
ツミキは目の前の機体を睨む。
「さっきからうるさいな、彼女の声が聞こえないだろ……」
アズゥは片膝を付き、両腕をぶらんと下げる。
『なにがアンドロマリウスだ! 所詮はこの程度だろ!!!』
アウルムが隙だらけのアズゥに向けて槍を構える。
『これで――』
カミラはアウルムを用いてアズゥにとどめをさそうとする。だが、
――ガシ。
と、アウルムのコックピットが、黒筋走るアズゥの左手に掴まれた。
「調子に乗るな……」
『――っ!?』
ツミキの左目に黒い×印が湧き上がる。
カミラは獣としての本能からか、相手パイロットから異様な空気を感じて全速で後退した。
(今の寒気は……)
カミラは口に溜まった唾液を飲み込み、頭にのぼった血を下げた。
(説明はできねぇが、あと……あと一歩踏み込んでいたら殺られていた気がする……)
動揺するカミラの元へ通信が入る。
『カミラちゃん。一度立て直すよ』
ナルミの指示。
カミラは首を横に振る。
『大丈夫だ! ここで仕留められる!!』
『駄目だよ、作戦通りここは退くんだ』
語気の強いナルミの言葉を聞き、カミラは渋々承諾する。
『……了解』
背を向け逃走を始めるアウルム。
ツミキは禁呪解放を収め、アズゥに膝を付かせる。
「あ、危なかったぁ……!」
とツミキは強張った表情を緩め、肩の力を抜いた。
一方、プールは通信を観測手であるネットに繋いでいた。
「ネット、アイツらほんとに退いた?」
『全軍撤退ですねぇ、間違いなく』
「了解。ひとまずOKか」
プールは一呼吸おいて、顎に垂れて来た汗を拭った。
(さっきの金メッキのパイロット、異様な空気を感じた……要注意だな)
プールはアズゥの中に居るツミキを見る。
ツミキは左目を閉じ、ぐったりとしていた。
「なんだか、すごく疲れた……」
ツミキ一行vs追跡チーム、第一陣はツミキ達が勝利を収めた。
〈既存キャラ精神体ステータス! ~追跡チーム編~〉※開花型能力者は心能の発揮に応じて精神体も伸びるため、(20~56)みたいに表記します。左が通常時、右が現在の最大開花時のステータスです(この最大開花時は今までのベストであって、今後もっと心能を発揮できる状況があれば伸びます。同様に精神体自体もキャラの精神的成長によって多少伸びたり、または低下したりします)。
スタミナ:パワー:テクニック
カミラ 180~225:40~86:60~92 計280~403 (リウム合金によるブースト込み)
アーノルド 30~58:48~70:50~72 計128~200
エルフ 42:29:81 計153
ピスケス 30:28:32 計90